【大塚ひかりの古典にポッ】妻の妹に恋した帝 『栄花物語』(1/2ページ) - 産経ニュース

メインコンテンツ

大塚ひかりの古典にポッ

妻の妹に恋した帝 『栄花物語』

 平安文学を読んでいると、今と昔の道徳観や価値観の違いに驚くことがある。

 歴史物語の『栄花物語(えいがものがたり)』によれば、村上帝は式部卿宮の北の方である登子に一目惚れ。后である安子に熱心に頼んだところ、二、三度、登子と逢わせてくれた。登子は安子の妹だったので、内裏のイベント見物に来ていたのを帝がちらりとごらんになって「どうしても逢いたい」と思うようになったのだ。

 だからといって妻に「逢わせてくれ」とせがむのは、現代人の感覚だと「とんでもない」という感じだが、『平家物語』でも、高倉帝の后の徳子が帝のために宮中一の美人女房の小督(こごう)を差し上げたりしているので、一夫多妻の当時、その手のことはあり得るというか、むしろ自分の息のかかった女のほうが安心ということもあったのであろう。

 が、それ以上に驚くのは、帝も登子も、后の安子には遠慮しても、登子の夫の式部卿には遠慮するそぶりが見られぬことだ。

 帝が宮中の造物所(つくりどころ)(調度などを調進する所)に命じ、登子にたびたび調度品までプレゼントしたのを知った安子は、非常に不機嫌になった。そのため二人は逢うのをやめた。

 やがて登子の夫の式部卿が死ぬと、帝は「今こそ登子を宮中に」と、式部卿の死をうれしう思うものの、安子の思惑に遠慮して我慢した。