関西の議論

セクハラか否か、裁判官たちを悩ませた被害者・女子学生8000通のメールの「中身」

 「望まない性的関係」を訴えるはずの大量のメールは、逆に親密ぶりを裏付ける根拠となった。京都にある大学で元特任教授だった男性(70)が、別の大学院に通う当時20代の女子学生へのセクハラを理由に懲戒解雇したのは違法として、大学側に損害賠償などを求めた訴訟。1、2審判決とも「女性側が性的関係を望んでいなかったとは言えない」として解雇処分を無効とする一方、賠償請求は退けた。

 裁判所がセクハラの有無を判断する材料にしたのが、女性が男性に送った約8千通の膨大なメール。愛憎入り交じるメッセージだったようで、判決も「男性に親密だったり批判的だったりして、真意がどこにあるのか理解しがたい」とこぼすほどだった。一体、裁判所を悩ませるメールとは、どのような内容だったのか。

その夜、手首の切り傷に気付いた

 1審、2審の判決から2人の関係やメールなどのやり取りを振り返る。

 2人の出会いは平成19年4月。男性は大学の特任教授に就任し、女性は別の大学院の博士課程に入学した。女性の指導教官が男性の教え子だったのが縁で、指導教官を交えた会食の席で知り合った。

 男性は哲学や美学の分野では国内有数の研究者で、会食した際に「女性が自分に関心を持っている」と感じたという。その後の展開は早かった。3カ月後の7月に美学の研究会で2人は再会すると、宴会の後、男性は女性を自宅に送り届けるまで話し込み、異性として意識するようになった。

 別れた直後に雨が降り出し、駅のベンチに座っていると、女性はわざわざ男性を追って来て傘を差し出した。心を打たれた男性は再び女性を自宅まで送った。自宅前で女性の様子から「待っている」と直感した男性はキスをした。

 男性が帰宅後、女性に傘のお礼のメールを送ると、女性はこう返信した。

 《無事にご帰宅されましたでしょうか。人の心、というよりも私の心は闇ですね》

 男性が女性の「心の闇」を感じたのは8月。2人は食事を楽しんだ後、女性宅へ向かい、肉体関係を結んだ。このとき、男性は女性の手首に切り傷があることに気づいた。

会員限定記事会員サービス詳細