ソ連崩壊後のロシアは、民主主義と市場経済を目指し、われわれと変わらぬ普通の国へと移行する。したがって、ロシア研究にはもはや多額の資金を用いたり優秀な人材を投じたりする必要は一切ない―。極端にいうと、これが多くの欧米諸国で見られた風潮だった。希望的観測に基づく間違った考えだったと言わねばならない。
思い知らされた露の特殊性
ウクライナ危機は、そのことを完膚なきまでに思い知らせてくれた。他国のどさくさに乗じて軍事力を投入し、電光石火のごとくクリミア半島を自国に編入して平然としている。そのやり方は、ロシアが「普通の国」になっていないことを満天下に示した。