南アフリカのリゾートホテルがスラムを模した宿泊施設を提供していることがわかり、「悪趣味」などの批判がわき起こっている。トタンぶきの掘っ立て小屋に泊まりトイレはくみ取り式の貧乏体験ができるという趣向だ。ブラジルやインドなどではスラム見学ツアーが人気。貧しさを見せ物にしたビジネスか、それとも啓蒙(けいもう)か。論議を巻き起こしながら「貧困ツーリズム」が急成長している。
(坂本英彰)
金持ちが貧乏の振りをする豪華な掘っ立て小屋
「本物の掘っ立て小屋ってのがどんなものか、家族みんなで体験できるぞ」
昨年11月に放映された米国のバラエティー番組で、男性タレントが皮肉たっぷりに紹介した。リゾートホテルらしからぬ粗末な施設。南アフリカ中部・ブルームフォンティーンにある「エモヤ・ラグジュアリーホテル&スパ」が、広大な敷地内に開設した「シャンティタウン(掘っ立て小屋の町)」だ。
黒人の貧困層が住む南アフリカの大都市でよく見られるスラムの建物を、そっくりに再現した。小屋が身を寄せうように建ち、戸外にはくみ取り式のトイレやドラム缶を利用したストーブなどを備える。小屋には鉄製ベッドや灯油ランプ、電池式ラジオと調度品も一風違う。
見えない部分には快適に過ごす配慮もある。波打つトタンの後ろはしっかりした壁があり、各小屋には水道やシャワーも完備。ベッドには羽毛布団がかけられ、床暖房やインターネット接続の無線ランも使える。都市のスラムと違って周囲はサイやキリンが闊歩(かっぽ)する私有の自然保護区だ。