「地震前の発光現象」発生メカニズムを研究

 この仮説は、論文の共著者で、米航空宇宙局(NASA)エイムズ研究所の地球科学部門に所属する研究者、フリードマン・フロインドが行ってきた研究(PDF)が基になっている。

「(フロインド氏の)実験によって、高度変成岩および火成岩が偏差応力を受けると、岩石中の電荷担体(イオンなど、電荷を運ぶ自由な粒子のこと)が活性化し、岩石を半導体に変えることが明らかになった(中略)。応力を受けると、鉱物粒子は結晶粒界多結晶体において、隣接する結晶間に存在する界面)に沿って滑る、すなわち転位(結晶中に存在する、線状の格子欠陥)が粒子全体を移動することにより、(火成岩を構成する鉱物内に普遍的に含まれる)過酸化架橋(peroxy bond、peroxy link)が壊れる」

すると、岩石中の負に帯電した酸素原子が分離し、酸素イオン群を放出し、それらは「応力を受けた岩体から流れ出る」。このとき、これら電荷を帯びた原子群は、周囲の空気を電離してプラズマを生成する。「プラズマは爆発的に地表へ抜けていき、目に見えるまばゆい光を発すると考えられる」と、研究チームは説明している。「正孔電荷キャリア(phole)と呼ばれる可動電荷キャリアが、応力勾配に沿って流れていくと、それらはやがて地表に蓄積し、空気分子を電離して、発光その他の現象を引き起こす」

地表へ勢いよく向かうこの動きから電荷が生成されるのは、垂直に近い断層が原因かもしれないと、研究チームは考えている。「ここに提示した研究の枠内でみると、このような観測結果は、地殻において発生するすべての応力が、地震につながる壊滅的な岩石破壊を引き起こすわけではないという事実とも一致する」

この説はまだ、十分な観測結果に基づいているとはいえない。また、発光現象に関しては、例えば、地表下における岩石の圧電効果(物質に力を加えると、それに比例した表面電荷が現れる現象)によって発生する電場や、磁場の乱れなど、ほかの説も存在する。

数時間続くこともあるとはいえ、発光現象は通常は短時間であることから、地震の早期警告システムとしてはあまり役に立たない。それでもテリオ氏は、発光現象と地震との関連性が広く一般に認知されることは有益だと考えている。

テリオ氏によると、2009年にイタリアで起きたラクイラ地震の前に、空に閃光を目撃した地元住民が、家族を連れて避難したケースもあるという(この地震では、石畳の上をちらつく直径10cmほどの炎を大勢の人が目撃している)。

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