2011年ニュージーランド地震で撮影された画像を集めた動画。なお、空中で観測された発光現象のほかにも、「地面からくるぶしの高さまで上昇する青味がかった炎のような光」の目撃例もある。英文Wikipediaによると、地震発光現象が地震学者たちの間で認められるようになったのは、1960年代の松代群発地震で撮影されたことがきっかけだったという。
今回の研究では、ヨーロッパと南北アメリカ大陸において特に広く記録されている目撃例65件を取り上げている。それらの地震の規模は、リヒター・スケール(マグニチュード)で3.6~9.2、発生時期は1600年以降だ。
説明のつかない発光現象は古くから目撃されていたが、19世紀後半に入って、アイルランドの地球物理学者およびエンジニアで、地震学(seismology)という言葉を生み出したロバート・マレットが、紀元前1606年から紀元後1842年までの発光現象を集めた「On the Facts of Earthquake Phenomena」(地震現象の事実について)と題するリストを出版した。その他の資料も参考にして、研究チームはリストの改良版を作成した。
過去のリストには本当の目撃談に混じって、突拍子もない虚偽の報告もかなり含まれていたが、「特定地域の目撃報告(カナダ、ケベック州のサグネ、ペルーのピスコ、イタリアのラクイラなど)の多くは、世界の互いに遠く離れた場所での出来事にもかかわらず、形状や色が類似している(球体で炎のような発光物だったなど)こともあり、EQL(地震発光現象)が現実に広範囲で発生していることを示す証拠とみなすべきだ」と研究チームは記している。
65件の発光現象のうち、85%がリフト(地球のマントル上昇に伴い地殻が膨張し割れるなど、地殻に伸張作用が働いてできた形状)やその近傍で発生しており、さらに97%が、垂直に近い断層のそばで発生していた。
ただし、垂直に近い断層で地震が発生すること自体がまれだ。研究によると、記録に残るすべての地震のうち、プレート内断層に沿って発生するものは5%にすぎないという。にもかかわらず、発光現象はほぼすべてそのような場所で発生している。
「地震発光現象がなぜ、他のタイプの断層でなく、リフト環境においてよく発生するのかは、われわれにもまだよくわかっていない」と、論文の共著者のひとりで、ケベック州天然資源省に所属する地質学者のロベール・テリオは述べる。「しかし、例えば沈み込み帯などでは、断層は30~35度の角度で傾斜しているのに対し、これらのケースにおいてリフト環境を特徴づけているのは、垂直に近い断層だ」
また、地震の前や最中ではなく、発生後に発光現象が起きることも非常にまれだ。このことから、発光現象が起こるのは、地下の岩石が互いにこすれ合うのに伴い、地表下で急速に力が発生し、変化が生じるためではないかと研究チームは仮説を立てた。