地震の発生前に、まれに出現する「地震発光現象」。これまで記録されてきたケースを分析し、この現象が起こる理由を解明しようとする論文が発表された。
カナダのユーコン準州とブリティッシュコロンビア州にまたがるタギシュ湖で目撃された地震発光現象。時期はおそらく1972年か1973年の7月1日ごろ(正確な日付は不明)。推定サイズは直径1m。一番手前にある光球はこの後ゆっくりと山を上がっていき、奥の光球に合流したという。
2011年、桜島噴火が活発だったころ、「地震発光現象か!?」と題する動画が「YouTube」に投稿された。タイトル部分にはさらに続けて「UFO群か!?!」とある。20世紀の前半ならば、後者の反応が一般的だったかもしれない。しかし現在のわれわれは、空に現れる白または色つきの謎めいた光の球が、実際には地震活動によるものだと知っている。それらは地震の発生前、またときに発生中に出現し、あるときは虹色の光や炎に見え、またあるときは何時間も消えない。
1900年代にあるイタリアの司祭が、この現象について著した文献によると、記録に残る目撃例は、古くは紀元前89年にさかのぼるという。そして、現在のYouTubeでは、地震発光現象はたくさん投稿されている。
2008年の四川大地震の30分前に撮影されたという動画。
2008年の四川大地震の30分前に撮影されたという上空の動画(上の動画)や、2011年にニュージーランドのクライストチャーチを中心に起こった地震でのもの(次ページに掲載)などだ。
地震の際に発光現象が起こること自体はもはや議論の対象ではなくなったが、なぜそのような現象が起こるのかはこれまで解明されてこなかった。現象が非常に珍しいため、分析が難しいからだ。
しかしこのほど、地震学者チームが、過去の例をできるだけ多く分析し、なぜこの現象が起きるのかを解明しようとする研究論文を「Seismological Research Letters」誌に発表した。研究者らは地震発光現象を、垂直に近い断層等において、地面が引っ張られる際に、応力によって生じる電流を地表へ向けて解放することで発生するものだと考えている。