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進行方向右手前方に、あの名峰がくっきりと姿を現した。マッターホルンだ。澄みきった青空を背景に、うっすらと雪を残す冴え冴えとした姿は、神々しささえ感じさせる。ほうっ…。声にならないため息が、満員の車内に満ちた。窓の外にマッターホルンって。あまりの非現実感に軽く目眩を覚える。
ゴルナーグラート・モンテローザ鉄道は、標高1620mのツェルマットと標高3089mのゴルナーグラートを、わずか42分で結ぶ登山鉄道だ。標高差1469mを、アプト式ラックレールでぐいぐい登る。レールが噛み合うたびに起こるアプト式特有の小さな揺れと音が、心地いいったらない。一歩一歩堅実に大地を踏みしめるその姿はたくましく、安心感をもたらしてくれるのだ。そっけないほど無骨なビジュアルも好ましい。
停車駅はフィンデルバッハ、リッフェルアルプ、リッフェルベルク、ローテンボーデン、そして終点のゴルナーグラート。どの駅からも、スイスアルプスを眺めながらの登山道やハイキングコースにアクセスできる。