中高生のための国民の憲法講座

第19講  憲法9条 芦田修正が行われた理由 西修先生

 こうして、「自衛のためならば、戦力の保持を可能にするために」芦田修正が成立したのですが、歴代政府は、この芦田修正を考慮に入れた解釈をしてきていません。2項を全面的な戦力不保持と解しています。自衛隊を「戦力」といわず、「自衛力」と説明しているのはこのためです。いまや世界的に有数の実力を備えた自衛隊を「戦力」でないと言い続けるには限界があります。政府が芦田修正を踏まえた解釈をしてこなかったことが、自衛隊の憲法上の存在をあいまいなままにしてきている元凶といえます。

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【プロフィル】西修

 にし・おさむ 早稲田大学大学院博士課程修了。政治学博士、法学博士。現在、駒沢大学名誉教授。専攻は憲法学、比較憲法学。産経新聞「国民の憲法」起草委員。著書に『図説日本国憲法の誕生』(河出書房新社)『現代世界の憲法動向』(成文堂)『憲法改正の論点』(文春新書、最新刊)など著書多数。73歳。

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