鑑賞眼

PARCO劇場 「ロスト・イン・ヨンカーズ」

■三谷の原点…カラリと笑わせて

三谷幸喜は、米劇作家ニール・サイモンの影響を再三、口にしてきた。劇作家を目指すきっかけは学生時代、西武劇場(現PARCO劇場)で見た「おかしな2人」であり、彼の戯曲を書き写したこともあると。

そのいわば自身の原点といえるサイモン作品を、三谷が初演出。1991年にブロードウェーで初演され、トニー賞とピュリツァー賞を受賞した代表作の一つだ。演出次第ではシリアス一辺倒にもなるユダヤ人一家の物語を、少年目線で戯画化し、カラリと笑わせるのが三谷流だ。

舞台は1942年の米ニューヨーク州ヨンカーズ。ドイツ系ユダヤ人の厳格な祖母(草笛光子)のもとに、疎遠だった息子エディ(小林隆)が現れ、出稼ぎのため孫のジェイ(浅利陽介)とアーティ(入江甚儀(じんぎ))を預ける。杖(つえ)を振り回し、家族に恐れられるおばあちゃんに、ちょっと頭の弱いベラおばさん(中谷美紀)、ギャングに追われるルイおじさん(松岡昌宏)らが入り交じる3代のドラマだ。

変わり者一家の日常を、少年たちがシニカルかつ好奇心を持って見つめる1幕は、客席を沸かせるコメディー。だからこそ2幕、ベラの不器用な恋愛が家族にもたらす事件に、胸が痛む。愛情表現がうまくできない家族の距離を、少年たちが少しずつ詰めていく繊細な舞台だ。中谷が難役を実にチャーミングに演じ、つらい過去を抱え素直になれないおばあちゃんの深い思いを、草笛がじんわり伝えた。11月3日まで、東京・渋谷のPARCO劇場。全国公演あり。(飯塚友子)

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