話の肖像画

映画監督 フランシス・フォード・コッポラ(74)(5) 忘れられない黒澤監督と勝さん

 〈世界的な巨匠、黒澤明監督(1910~98年)から大きな影響を受けたことは有名だ〉

 映画の歴史的な傑作リストを作成するとしたら、黒澤監督の作品群が上位に入ることは疑いがありません。傑作を1本撮った、2本撮ったというのではなく、ざっと8、9本の傑作を残したという点でまれな存在です。いかなる歴史的な名監督と比較しても遜色のない巨匠です。

 お会いするチャンスがあり、微力ながらアシスタントを務めることができたのは喜びでした。一般的に偉大なインスピレーションを持ち世界を変えるような作品を作った映画監督が必ずしも素晴らしい人格の持ち主とは限りません。しかし黒澤監督は親切な人でした。特に私には親切にしてくれました。

 「影武者」に出資者がいなくて黒澤監督が困っているということが、私とジョージ・ルーカスの耳に入りました。そこで私たちは映画会社に掛け合って仲介することに成功し、製作総指揮という立場をとることになりました。

 しかし、実質的なことは何もしていません。黒澤監督は勝新太郎さんと組んで「影武者」を撮り始めました。このキャスティングは素晴らしいと思いました。パーフェクトです。残念なことに彼らはうまくいかず、勝さんは降りてしまいます。代わりに仲代達矢さんが素晴らしい仕事をしました。しかし、あの役は勝さんのものでした。

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