「ハダカデバネズミ」が、ガンにならない理由

 ハダカデバネズミは、ガンマ線を打ち込んだり、腫瘍を移植したり、発ガン物質を注射したりしてもガンにならない。その一因は「密度の高いヒアルロン酸」だとする研究が発表された。

ハダカデバネズミは酸素の少ない環境で生きるため呼吸のペースが遅く、非常に少量のエサでも生きることができ、苦痛にも強いことがわかっている。Photo: Smithsonian’s National Zoo

ハダカデバネズミはアフリカに生息するネズミの一種だ。地中に平均80頭、最大300頭もの大規模な群れを形成し生活する。このネズミが研究者たちの関心を引いているのは、彼らが30年近く生きられるためだ。体の大きさは実験用マウスとほぼ同じであるにもかかわらず、寿命はマウスの10倍近くも長い(日本語版記事)ことになる。

 ガンの研究者から見るとマウスとハダカデバネズミは、それぞれガンという病気の両極端にある。マウスはガンの動物モデルとして使われるが、それは寿命が短くガンの発生率が高いからだ。ガン発生のメカニズムの研究や、ガンに効く薬のテストにこの特徴が役立つ。

 一方、ハダカデバネズミは長年の研究においてガンが発生したことがない。研究では通常、ガンを誘発するためにガンマ線を打ち込んだり、腫瘍を移植したり、発ガン物質を注射したりするのだが、ハダカデバネズミはガンにならないのだ。

 米ロチェスター大学のヴェラ・ゴルブノヴァとアンドレイ・セルアノヴは、ハダカデバネズミがガンから身を守るメカニズムを発見したのではないかと考えている。

 ふたりはハダカデバネズミの腋窩と肺から採った細胞を研究していて、細胞の周辺に化学物質が異常に密集していることを発見した。その化学物質はヒアルロン酸(ヒアルロナン)だとわかった。

 ヒアルロン酸はすべての動物に見られる化学物質であり、細胞の結合が主な役割だ。ヒアルロン酸は力学的な強さを与えるだけでなく、細胞の数が増える際の制御にも関係している。

会員限定記事会員サービス詳細