田所龍一の球界よもやま話

「掛布監督」阻む金銭トラブルの実像はこうだ…誤解でイメージ悪化した「阪神の宝」がタテジマを着る日

 球団や電鉄本社のほとんどの人たちが掛布氏の卓越した「野球理論」を認め、選手やOBたちの間で最も人望があり、ファンが一番望んでいる監督だと分かっているのに-である。

 実に不思議な球団。それでも昔は「理由」があった。

 1987年、シーズン開幕を目の前に控えた3月22日、掛布氏が飲酒運転で現行犯逮捕された。知人の結婚披露宴に出席し、その帰り、高速道路の料金所での検問にかかったのである。安全運転を第一とする電鉄会社にとって飲酒運転の罪は最も重い。当時、電鉄社長だった久万俊二郎オーナー(故人)は掛布氏を「欠陥商品」と切り捨てた。

 球団の指示に従い自宅謹慎しているチームの主砲に「そこまで言わなくとも…」の声もあったが、久万オーナーの怒りは収まらず、関係者の間では「オレの目の黒いあいだは、掛布には絶対にタイガースのユニホームは着させない」と発言したと言われている。

 まさか、そんな個人的な発言が方針になるはずもなく、いつかはオーナーの怒りも収まるだろう…とと思っていた。だが、それは甘い観測だった。

 そして最悪の状況下で翌88年、掛布氏は現役を引退した。

現場から十数年も離れた人を…

 「地元のスター長嶋さんに憧れて始めた野球。でも、今の自分があるのはタイガースファンの熱い声援があったから。阪神ファンが掛布雅之を育ててくれた。だからまず、一番にそのファンに恩返ししなきゃいけない。よそのチームのユニホームを着るのはそのあとだよ」

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