湯浅博の世界読解

「平和を愛する」とはあきれる 協調ポーズの中国はうろん

中国共産党が総力を挙げた日本「右傾化」キャンペーンも、手詰まり状態のようだ。中国人民解放軍の戚建国副総参謀長が先月31日から3日間、シンガポールで開かれたアジア安全保障会議で、いかつい軍服に不似合いな協調ポーズを振りまいた。

「中国は平和を愛する国家だ。海軍は周辺国に挑発的な行為をとったことはない」

副総参謀長が続けて「紛争は対話で解決を」と言えば、名コラムニスト、山本夏彦なら「申し分のないことを言う人たちは、うろんです」と応じるだろう。

そんな戚副総参謀長が、わが尖閣諸島(沖縄県石垣市)の領有権問題を持ち出し、棚上げ論を打ち出した。「われわれより知恵のある次世代の人に解決してもらうべきだ」と、1970年代に当時の最高実力者、トウ小平が述べた言葉を繰り出した。仮に日中の「棚上げ合意」があったとしても、彼ら自らが92年制定の領海法で合意を破ったことはおくびにも出さない。

棚上げ論の表明は、中国が協調路線にカジを切ったようにみえるが、実際には軍による「世論戦」のマジックであろう。副総参謀長は「無条件に妥協することはなく、国家の核心的利益を守る決心が揺らぐことはない」と保険をかけた。浄瑠璃の国性爺合戦ではないが、「証拠なくてはうろんなり」である。

さっそく、フィリピンのガズミン国防相が「南シナ海で実際に起きていることと全く違う」とマジックの裏を突いた。つい最近、張召忠少将が1隻の新型揚陸艦があれば「1カ月もたたずに南シナ海の全島を奪回できる」と威嚇したことを忘れない。