鑑賞眼

ブロードウェーミュージカル「ヘアー」 

■あふれ出る60年代のエネルギー

「60年代」のエネルギーが舞台からあふれ出て、客席を巻き込む。長髪にラッパズボンのヒッピーが、プラカードを手に客席まで下り、反戦デモをする。愛と平和を訴え、観客と踊る。恐る恐るステップを踏んでいた観客が、カーテンコールでは舞台上で人が変わったように踊り出す日本では珍しい光景も。それは懐古ではなく、当時を知らない俳優と観客が、時代の変革期に抱えるもやもやとした不安や怒りを今、共有し発散しているように見えた。

1967年、米国で誕生したロックミュージカル。ベトナム戦争に徴兵された青年が、ニューヨークのヒッピーグループと出会い、苦悩しながら平和に目覚める物語。初演は出演者全員がヌードで踊る場面が話題を呼んだ。今舞台は2007年、ニューヨークで開催された同作誕生40周年コンサートが熱狂的に支持されたことを受け、翌年にリバイバル上演された舞台の来日公演。ダイアン・パラウス演出の21世紀版は、09年のトニー賞最優秀リバイバル作品賞も受賞した。

舞台は泥臭いほどに「60年代」を再現。フラワーチルドレンそのままの20~30代の俳優が、当時の若者のパワーを内包しながら、「アクエリアス」など初演時グラミー賞に輝いた名曲を圧倒的技量で聴かせる。

21世紀版ヒットは、オバマ大統領誕生の機運を反映したという。不安定な時代の「変革」をすくいとる普遍性が、今の日本の観客も刺激していると感じた。9日まで、東京・渋谷の東急シアターオーブ。(飯塚友子)

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