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【治安最前線】(1)東京湾岸署水上安全課 海上からテロに備え「五輪成功へ安全安心を確保する」

納棺師という異色の経歴を経て警視庁の行政職員である海技職になった宇佐見沙織主事
納棺師という異色の経歴を経て警視庁の行政職員である海技職になった宇佐見沙織主事
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 大型連休を間近に控えた4月下旬。護岸が複雑に入り組んだ東京湾に、海風に揺られながら白い船体が姿を現した。警視庁東京湾岸署の警備艇だ。赤い甲板を目立たせながら、周囲ににらみをきかせるように時速約20キロでゆったりと進んでいく。

 操縦室では、乗員がレーダーに目をこらし、双眼鏡で護岸や海上の隅々に至るまで異変がないかも確認していく。残り3カ月を切った東京五輪の開幕。水泳やテニス、ボートといった多くの競技が行われる臨海部では、海の警備も成功のカギを握るとされている。

 「大会成功のため、安全安心を確保したい」。操縦桿(かん)を握る、東京湾岸署の宇佐見沙織主事(30)の手にも自然と力が入る。

■「唯一」の警備部隊

 東京湾岸署は警視庁で唯一、警備艇を運用。海上警備を専門とする「水上安全課」があり、パトロールや水難者の捜索・救助を24時間態勢で行っている。

 警備艇は計22隻。普段パトロールに使う警備艇は全長8~12メートルと小型だが、機動性に優れ、高性能のレーダーは遠く離れた船舶の動静も捉えられる。船長と機関長、さらに警察官が同乗し、警戒にあたっている。

 入庁5年目の宇佐見さんも警備艇を操る少数精鋭のプロ集団である水上安全課の一員だ。海技職の行政職員で、水上警備一筋で技術を磨いてきた。「臨機応変に対応できる操船技術を身に付けたい」と意気込む。

■納棺師の経歴も…

 もともと、船の操縦は全くの未経験だったという。

 宇佐見さんは高校卒業後、美容専門学校に進学。警視庁の警察官だった両親は、同じ道を歩むことを望んだが、化粧品販売など美容業界に進んだ。葬儀店で遺体に化粧を施す納棺師として働いたこともあった。

 そんな納棺師の仕事の中で、当時、刑事だった母が遺族と真摯に向き合い、捜査を尽くす姿に心を打たれた。「納棺師として寄り添うだけではなく、直接遺族の役に立ちたい」

 そこからの行動は早かった。海が好きだったこともあり、母の勧めで海技職を志す。勤務に必要な1級小型船舶操縦士の免許を取得し警視庁の門をたたいた。

東京湾岸署の裏手にあるターミナルに浮かぶ全長約8メートルの警備艇
東京湾岸署の裏手にあるターミナルに浮かぶ全長約8メートルの警備艇
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■加わる五輪の経験

 そんな異色の経歴を持つ宇佐見さんが、五輪警備の最前線に立つ。

 東京湾岸署管内には、都内の計約25の五輪競技会場の半数近くにあたる12会場がひしめき、選手村などの関連施設も抱える。

 これまで、テロなどの不測の事態に備え、海上保安庁など関係機関とも訓練を重ねてきた。大規模警備の経験はないが、プレッシャーはなく、万全の態勢だと断言できるという。

 「一生に一度携われるかどうかの大会。テロを防ぎ、安全に五輪を開催できるよう、しっかりとやり遂げたい」。納棺師から警視庁職員に転じた宇佐見さんに、また一つ、唯一無二の経歴が加わる。(王美慧)

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