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【縁 災害が結んだ、私たち】(1)つながっているよ。漁師の街に伝える 俳優、渡辺謙×「磯屋水産」代表、安藤竜司

「向き合うよりもそばにいる方が安心する」と語る俳優の渡辺謙さん=宮城県気仙沼市(宮崎瑞穂撮影)
「向き合うよりもそばにいる方が安心する」と語る俳優の渡辺謙さん=宮城県気仙沼市(宮崎瑞穂撮影)
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 「句点(。)ではなく、ほんのちょっとした読点(、)でしかない。被災地の現状を知れば知るほど、ここで区切りを打って終わり、ということではないんだと感じる」

 東日本大震災から、3月11日で10年。俳優、渡辺謙はこう言葉を選ぶ。節目でも、区切りでもない。読点にはその先に、まだまだ紡がれるべき物語がある。

 海とともにある漁師の街。宮城県気仙沼市港町。穏やかな湾に白い漁船が浮かぶ。防潮堤の圧迫感はない。ここで暮らす人は海との共生を選んだ。

 人と人とを「つなぐ」-。そんなコンセプトのカフェ「K-port」をここで渡辺は営んでいる。テレビ番組の取材で出会った人々との交流をきっかけに震災の2年後、店を開いた。

 できる限り、月1回は店に立つ。気仙沼にいないときは、ほぼ毎日、自筆のメッセージをファクスで送る。たとえば昨年の3月10日には、こんなふうに。

渡辺さんはほぼ毎日、自筆のファクスをカフェに送る
渡辺さんはほぼ毎日、自筆のファクスをカフェに送る
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 《啓蟄(けいちつ)も過ぎキツツキが木を叩(たた)く音も真剣さを増して来ました。自然の中で生きる者達は、常にシンプルで気持ち良いです。今日一日をどう生きるか…でも少しだけ息抜きに、ここでのんびりしてって下さい。ごゆっくり》

 「忘れていないよ、ちゃんとつながっているよ、ということを伝えたい。ツイッターなど便利なツールはありますが、僕はここだけに送りたい。常につながっているということをお互いに確認しあうことは、結構重要だと思う」

 気仙沼は遠洋漁業の拠点でもある。そして、カフェのある内湾地区は気仙沼の玄関口。個人として避難所を回り、番組でも被災地を取材していた渡辺は、ここに特別なものを感じた。

 「ここは外洋に出る船が多い。世界を回って1年帰ってこない船もたくさんある。ここの人たちは世界を向いている感じがした」

 震災から半年ほど。渡辺は一人の男と出会う。創業80年以上の水産物仲卸「磯屋水産」の3代目、安藤竜司(55)だ。安藤はスケッチブックを手に、渡辺に魚屋やカフェをつくる計画を打ち明けた。

 「当時はまだ、がれきのグレーな街だったが、色鉛筆でカラフルな街を描いた。そうしたら、謙さんが、そのなかのカフェを『俺がやるよ』って言ってくれた」

 渡辺は親交がある世界的な建築家、伊東豊雄に設計を依頼した。伊東が手がけたK-portと磯屋水産の店舗は隣り合い、屋根でつながっている。震災を通じて出会い、生まれた友情のように、寄り添う。

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