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「悟、おまえが一番悔しいよな」 葛藤の末…父の決断 立教大生殺害事件

小林悟さんが事件当時着ていたジャケットや靴などの遺品を前に、これまでを振り返る邦三郎さん=18日、埼玉県
小林悟さんが事件当時着ていたジャケットや靴などの遺品を前に、これまでを振り返る邦三郎さん=18日、埼玉県

 JR池袋駅(東京都豊島区)で平成8年、立教大4年の小林悟さん=当時(21)=が男に殴られ殺害された事件で、警視庁は今月11日、犯人の特定に至らず、容疑者不詳のまま書類送検した。捜査終結を望む遺族の意向を受けた形だが、今年は殺人罪などの公訴時効撤廃から10年、捜査打ち切りは異例の対応だ。「犯人逮捕への思いは変わらないが、他の事件に力を費やしてほしい」。悟さんの父、邦三郎さん(75)が心境を語った。(王美慧)

 事件解決に至らなかった悔しさや犯人に対する怒りは、もちろん消えてはいない。だが「やれることはやった」とも感じる。

 どんな人にも優しく接する息子だった。面倒見もよく、友人に慕われた。建築業界の仕事に興味を抱き、就職活動で各社の説明会に駆け回っていた大学4年のときに事件は起きた。池袋駅で口論となった男に突き飛ばされ、頭を強く打って死亡した。21歳。これからというときに未来を閉ざされた悟さんを思うと涙が止まらなかった。「お前の無念を晴らすために生きる」と誓った。

 手書きのビラを作成して配布。犯人の似顔絵を握りしめ、何日も仕事を休んで駅の改札で張り込んだこともあった。公的懸賞金制度もない時期に、全国初の私的懸賞金をかけて情報提供を募った。

 世間に疑問を投げかける活動も続けた。

 事件当時、駅ホームには100人を超える乗客がいたとされる。しかし、目撃者として情報を寄せたのはわずかだった。隣近所や地域とのつながりが希薄となり社会的無関心が問題となって久しかった。ビラ配りでは「無関心の怖さ」も訴えた。

 法の下では、人の死の重さに差があることにも疑問を投げかけた。当初、傷害致死事件として扱われ時効は当時7年。一方、殺人事件は15年だった。「この差は何なんだ」。憤りを感じ、長年勤めた銀行を辞めるなどし、時効延長を求める活動に注力。時効1カ月前の平成15年3月、警視庁が容疑を殺人に切り替えた。さらに22年には、その殺人の時効も撤廃された。

 悟さんの無念を晴らす「望み」がつながれたはずだったが、この殺人の時効撤廃が、ある思いを抱かせた。

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