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【都民の消防官(2)】足立署消防司令補 大日向良治さん(57) 命は仲間と救う

出動件数2万8千件を誇る足立署の大日向良治司令補=足立区
出動件数2万8千件を誇る足立署の大日向良治司令補=足立区

 「仕事は常に百%の出来でなければならない」。歴代の先達の言葉を、よく反芻(はんすう)するという。目の前の命を救うという重責が課せられる救急活動。いつも最善の準備に心を砕いてきた。

 平成2年3月、駆け出しのころの現場が思い出される。墨田区の民家から「娘が出産した」と通報が入った。急行すると、民家の廊下は血だらけ。跡をたどると、トイレの中から女性のすすり泣く声が聞こえた。胎盤が落下していたが、女性の母親が赤ちゃんを取り上げていた。千グラムほどの低出生体重児。仮死状態だった。

 すぐさま心臓マッサージを開始するよう隊長から指示が飛んだ。一方で、目線がトイレの中の一部を捉えていた。それは、血だまりの中に浮かぶ丸いものだった。

 「臓器か。いや子供だ」

 もう1人いるとは聞いていなかったが、予備でもう1人分の資機材を積んだのは「幸運」だった。搬送を終え、子供2人は病院で助かる見込みだとの報告が入ってきたときは、胸をなでおろした。

 救急35年、隊長として12年あまりがたつ。3人1組で向かう現場に、同じものは一つとしてない。本庁から送信される事例集を検討し、いつもみんなで話し合っている。

 「『救う』という目標を仲間と分かち合うこと」が原動力になっている。もちろん、酒席で言い合いになることもある。でも、過ごした時間が、最前線での活動に生きてくるとも信じている。

 冒頭の言葉には続きがある。「1人で成し遂げられなくても、隊全体で百%であればいい」。人の生死のはざまを目の当たりにしても、互いが補い、支え合い、そして救ってきた。「次は自分が伝承する番だ」。後輩を見つめる目には優しさと決意がにじんでいた。

(千葉元)

 【プロフィル】大日向良治(おおひなた・りょうじ) 秋田県出身。昭和56年、東京消防庁入庁。妻の友希乃さん(51)、長男(24)、長女(21)と4人暮らし。趣味はスキー。友希乃さんとの晩酌を日々の楽しみとしている。週2~3回、10キロのジョギングを25年以上継続している。

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