PR

ニュース 社会

【記者発】「薬物犯罪」更生の道とは 神戸総局・宝田良平

保釈され、報道陣の前に姿を現し、頭を下げた伊勢谷友介 =9月30日、警視庁東京湾岸警察署(尾崎修二撮影)
保釈され、報道陣の前に姿を現し、頭を下げた伊勢谷友介 =9月30日、警視庁東京湾岸警察署(尾崎修二撮影)

 大阪府警の担当をしていたとき、薬物犯罪で勾留中の人から何度か手紙をもらった。当時、府警では誤認逮捕や統計不正といった不祥事が相次ぎ、批判する署名記事をけっこう書いていた。拘置所でそれを読んだのか、面識のない記者を指名して、会社に送ってくれたのだ。

 いずれも便箋の余白がなくなるほどびっちり書き込まれ、逮捕や証拠収集手続きの違法を主張していると察することはできたが、大部分は文字が小さすぎてつぶれてしまったり、単なる曲線だったりして判読できなかった。それぞれ別の被告人なのに、全体から受ける印象はよく似ていた。読者からの手紙は仕事冥利(みょうり)に尽きるものではあるが、記者として役に立てることはないだろうとも思った。

 「一社会人として、社会的制裁をしっかりと受ける」。大麻取締法違反(所持)罪で先日起訴された俳優、伊勢谷友介被告の謝罪文は明瞭だった。言わずと知れた売れっ子は東日本大震災の被災地支援や教育事業などに熱心だったから、イメージとの落差は衝撃をもって受け止められた。

 個人の起こす薬物事件は「被害者のいない犯罪」といわれるが、伊勢谷被告の場合、その多方面にわたる影響の大きさから、あるテレビの解説者は「被害者だらけだ」と憤っていた。

 確かに、民事上の損害を訴える人は大勢いるだろうし、世間のイメージが清新であるほど「裏切られた」と怒りを買い、社会的制裁は苛烈になる。伊勢谷被告に待つ道は「一社会人」が受ける制裁とは比較にならないだろう。保釈時のあまりにスタイリッシュなスーツ姿を見て、その覚悟はあるのだろうかと、少し思ってしまった。

 著名人として生きてきた以上、大きな責任を負うのは当然として、社会的制裁というあやふやなものに、個人を更生させる観点はないだろう。バッシングされ、関心が薄れれば、やがて忘れ去られる。次に名を聞くのは再犯のときだけ、というかつての著名人は何人もいる。

 有名であろうとなかろうと、薬物は自分で断つしかなく、その意味で被害者のいない一人の犯罪なのだ。

 あのときの手紙も「話を聞いて」という孤独感だけは、ひしと伝わってきた。

                  ◇

【プロフィル】宝田良平

 平成13年入社。大阪社会部時代は刑事司法分野を中心に、「大阪維新の会」が掲げる大阪都構想をめぐる動きも取材した。2月から神戸総局勤務。

関連トピックス

あなたへのおすすめ

PR

PR

PR

PR

ランキング

ブランドコンテンツ