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上智大生殺害から24年 時効撤廃訴え続けた父「刑事と民事で償いを」

「被害者への償いは刑事と民事で」と訴える小林賢二さん(村嶋和樹撮影)
「被害者への償いは刑事と民事で」と訴える小林賢二さん(村嶋和樹撮影)

 東京都葛飾区柴又で平成8年、上智大4年の小林順子さん=当時(21)=が刺殺され、自宅に放火された事件は9日で発生から24年。事件後、父親の賢二さん(74)は、殺人事件の被害者遺族の会「宙(そら)の会」を結成し、時効撤廃運動の先頭に立ってきた。その撤廃の実現から今年で10年。「被害者への償いは刑事と民事の両輪が伴わなければ前に進まない」。事件で経済的苦境に陥る遺族も多く、国が被害者への賠償を立て替える「代執行制度」の必要性を訴えている。

 事件では順子さんだけでなく、自宅を放火され、住む場所も失った。事件解決のため、現場の保存を希望していたが、周囲は住宅密集地で、やむなく取り壊しを決めた。100万円ほどかかり、国から支給された犯罪被害者等給付金はほぼ消えた。賢二さんは「事件後も遺族が同じ場所に住み続けることは、心情的にも難しい。給付金は見舞金程度で、苦しい生活を強いられる」と明かす。

 加害者が特定され、遺族が損害賠償請求をしても賠償金が支払われるまでの道のりは遠い。平成27年の日弁連の調査によると、殺人事件の遺族が損害賠償を求めて活動した24件のうち22件で民事訴訟や損害賠償命令などで5243万円(平均値)の書面上の賠償額を得た。だが、実際に加害者から全額支払われた遺族はゼロで、賠償金の回収率は3・2%にとどまる。

 一方、遺族が国に金銭的な補償を求める声を上げることには不安もある。「時効の次はカネか」。そんな心ない声も賢二さんの耳に入ったという。国が遺族への賠償を立て替え、強制力を持って加害者に支払いを迫る制度の実現こそが、新たな殺人事件の抑止にもつながると信じている。

 賢二さんは「加害者は刑務所に入れば罪の償いが終わるわけではない。私たちと同じ苦しみを味わう人が出ないよう、遺族の窮状を訴え続けていく」と力を込めた。(村嶋和樹)

 ■上智大生殺害事件 平成8年9月9日午後4時半ごろ、東京都葛飾区柴又の民家で、上智大4年の小林順子さん=当時(21)=が首を刺されて殺害され、自宅が放火された。事件直前には、雨の中で傘も差さず玄関前に立つ不審な男が目撃されている。遺体に掛けられていた布団と玄関先にあったマッチ箱にA型の血液型が付着。DNA型鑑定で同一人物のものと判明した。また、順子さんは両手足を縛られていたが、両足を縛ったストッキングの結び方は、造園業者らが用いる「からげ結び」という特殊なものだった。

 ■公訴時効 犯罪行為が終わってから一定期間が過ぎると起訴を認めない制度。時間の経過で証拠が散逸し、公正な裁判が困難になることなどが根拠とされる。平成17年1月施行の改正刑事訴訟法で、殺人などは15年から25年に延長された。22年4月には、人を死なせた罪で、最高刑が死刑に当たる強盗殺人や殺人の時効を廃止する改正刑事訴訟法が施行。施行時点で時効が完成する前の事件にもさかのぼって適用された。

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