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妻を助け濁流に 熊本県人吉市の81歳男性

熊本県人吉市内で片付け作業を手伝うボランティアら=8日午前9時56分、(鳥越瑞絵撮影)
熊本県人吉市内で片付け作業を手伝うボランティアら=8日午前9時56分、(鳥越瑞絵撮影)

 熊本県南部に大きな被害をもたらした豪雨。同県人吉市下薩摩瀬(しもさつまぜ)町の井上三郎さん(81)は、流されそうになる妻を追って濁流に向かった。近隣住民の協力もあり妻は助かったが、井上さんは犠牲に。「お父さん頑張って」。大雨の中響いた妻の悲痛な叫びは届かなかった。

 「家の中にいたら助かってたかもしれないのに」

 井上さん宅の向かいに住む魚住光二さん(70)の表情には悔しさと無念さがにじむ。

 魚住さんによると、4日午前8時ごろ、近くの用水路から水があふれているのを確認した。「避難しようか」。車での避難も考えたがすでに車庫は浸水。水位は胸の部分まで一気に上昇していた。

 家の中に戻ろうとしたとき、井上さん夫妻が荷物を持って家から出てくるのが見えた。「出てきたら危ない。家におって!」。そう叫んだが、声は激しい雨音にかき消された。

 井上さんの妻が外に一歩踏み出した瞬間、一気に20メートル先まで流されていく。すぐに井上さんが妻を追い、近くの柵につかまりながら妻の体を支えるのが見えた。

 救助を待つわけにはいかない。魚住さんは自宅のビニールひもを取り、鉄柵に巻き付け、2人に投げた。井上さんが妻の手にひもを巻き付け、魚住さんがひもを引っ張って救助した。

 再びひもを投げたが、井上さんはなかなか自分の手に巻けず、柵から手が離れた一瞬で、濁流にのまれた。「旦那を助けて、助けて!」。泣き叫ぶ妻に、駆けつけた近所の男性(56)が「とりあえず逃げなきゃ」と言い聞かせ、男性宅の2階まで避難させた。

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