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渋谷ライフル乱射事件で被弾 執念の「赤鬼」刑事逝く

警視庁捜査1課管理官時代の緒方保範さん。多くの捜査員から慕われた=平成3年1月、関係者提供
警視庁捜査1課管理官時代の緒方保範さん。多くの捜査員から慕われた=平成3年1月、関係者提供

 執念の刑事が鬼籍に入った。警視庁捜査1課元管理官、緒方保範(やすのり)さんが6月13日、87歳で死去した。確固たる信念と体を張った捜査で数々の難事件を解決へと導いた。「その伝統を引き継いでほしい」。犯人を捉える防犯カメラの普及といった捜査をめぐる状況が様変わりする今でも、緒方さんらが築き上げた、その伝統は生きるはずだと、後輩らは信じている。

 1枚の写真が警視庁の資料室に残されている。昭和40年7月、世間を震撼(しんかん)させた東京・渋谷での18歳少年によるライフル乱射事件。銃弾の雨の中をかいくぐり、少年に体当たりしようとする、当時原宿署勤務だった緒方さんを捉えたものだ。左肩に被弾し血まみれになりながらも少年を追う姿は、刑事の執念を感じさせる。

 その形相は険しく、“赤鬼”の異名を取るゆえんが垣間見れる。「体を張って悪と対峙(たいじ)する警察官の象徴だった」。捜査1課OBで緒方さんを慕ってきた元丸の内署長、佐藤太郎さん(72)は語る。

 その後、捜査1課へと進んだ緒方さんは存分に能力を発揮する。代表とされるのが61年11月に有楽町で現金輸送車が襲撃され3億円が奪われた事件。海外グループが綿密に計画を練ったもので、催涙スプレーやヘルメットといった多くの物証が現場などに残されながらも犯人特定は難航を極めた。

 突破口を開いたのは緒方さんが目を付けた遺留品の毛布だった。レンタル品で約500軒のリース先を地道にたどれば、犯人の尻尾をきっとつかめると踏んだ。事件から約300日目にフランス人らの容疑者グループを浮上させた。

 事件に携わった捜査1課OBの河内英敏さん(70)は「ホシ(犯人)につながる『見る眼』、捜査の着眼点がずば抜けていた」と語る。元警察官僚で中央大教授の四方光さん(56)も捜査1課への出向時代に緒方さんからこう教わった。「モク(目撃証言)にしろブツ(物証)にしろ、狭く構えると大事なものを見過ごす。幅広くものを見ろ」

 こわもてだが、後輩の指導にも力を抜かず、若手捜査員の話にも、耳を傾ける姿勢も尊敬を集めた。「毎晩最後まで残るのは緒方さん。心強い存在だった」。元捜査員は感謝する。

 平成5年に退職後も捜査本部に度々顔を出しては後輩を鼓舞し続けた。DNA型鑑定の精度向上や防犯カメラの普及…。緒方さんの現役時と比べ、捜査を取り巻く環境は、めまぐるしく変遷する。だが、四方さんは訴える。「捜査1課には緒方さんのような視野の広さと人情味を持った刑事を育てる人づくりの仕組みがある。現役にも、その伝統を引き継いでほしい」(村嶋和樹、松崎翼)

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