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大阪北部地震の教訓は活かせたか 「無理して出社しない」通勤時の被災対策

 大阪北部地震は朝の通勤時間帯を襲い、交通網の混乱が多くの通勤難民を生んだ。企業の中でも社員の通勤時の被災を想定していたところは少なく、非常時の出勤について見直したり、災害時の対応指針である「事業継続計画(BCP)」の策定を進めたりする動きが生まれた。「無理して出社しない」という考えが根付き始めたきっかけでもあった地震の教訓は、新型コロナウイルスの感染拡大を受けた企業の対応にも生かされている。

自力で出勤の社員も

 2年前、地震発生を受けて、高島屋の大阪店(大阪市)と洛西店(京都市)では開店時間を午後にずらし、一部の売り場に限って営業した。だが、こうした方針が伝わらず、多くの従業員が自己判断でタクシーや徒歩で出勤した。社外でも勤務指示を確認できるインターネット上の社内掲示板はあるが、出勤前だった担当者が社内端末で情報を更新できなかったためだ。

 無理な出社は二次被害につながる危険もある。その後、社外の端末からも入力できるようシステムを変更。担当者は「有事に社内掲示板を確認する習慣が身に付き、情報共有もスピーディーになった」と話す。新型コロナウイルス禍でも、営業体制の変更などの伝達で効果をあげた。

LINEで連絡体制

 「就業時間外の連絡方法が徹底していなかった」という大和ハウス工業も地震後、無料通信アプリ「LINE(ライン)」での連絡体制を整備。同社では災害対策として「出社を前提としないテレワークを推進する」動きもあるという。

 BCPの見直しも進む。ダイキン工業は地震後、社長が一括して担っていた災害時対応を改め、事業所ごとで出社指示などを行うことにした。「地域の実情に合わせ、機動的な対応が可能」。コロナ禍を受けた感染症対策もBCPで充実させるよう検討を進める。

中小で進まぬBCP策定

 「すでに出社している社員も多かったが、取るべき行動が分からず社内は混乱した」と振り返るのは大阪府八尾市の機器製造「日本精器」の平井研三社長(61)。「より大きな地震が起きていたら社業を継続できない」と強い危機感を抱いた。大阪府などが中小企業向けにBCP策定を支援する制度を用いて専門家の指導を受け、昨春、有事の際の部材調達先や人員配置を定めたBCPを完成させた。「新型コロナの感染拡大でも対応できる構えがあり、落ち着いて行動できた」と話す。 

 ただ、大阪商工会議所が昨年行った調査によると、府内の資本金3億円以下の中小企業では、BCP策定率は13%にとどまった。策定しない理由には「人手不足」「時間が取れない」-などがあり、後回しになっている現状が浮き彫りになった。大阪府経営支援課の担当者は「大阪北部地震を機にBCPの策定の必要性は感じていても、何から手を付ければいいかわからない中小企業の経営者は少なくない。支援制度を活用してほしい」と話している。

備えで安心

 田辺三菱製薬(大阪市中央区)の社員、坂下潤平さん(36)=大阪府豊中市=は2年前の6月18日、出勤のため、自宅最寄り駅に向かう階段を上がり始めた瞬間、胸ポケットに入れた携帯電話の震えを感じた。平成23年に岩手営業所で東日本大震災を経験しており、久しぶりに聞く緊急地震速報の音に「大きな揺れが来る」と構えた。

 電車は運転を見合わせており、メールで上司に無事と通勤が困難なことを報告すると「無理せずまずは帰りましょう」と返信があった。発災から待機の指示が出るまでわずか30分ほど。「会社に備えがあり、安心できた」と振り返る。

 同社が東日本大震災後に策定したBCPが機能した。災害時の社員の安否確認方法や会社機能停止時の対応が決まっていた。さらに同社は本社のある大阪が混乱した大阪北部地震を契機に、緊急時にどの社員や幹部が本社に駆けつけるかを定めるなど新ルールも設けた。新型コロナウイルス感染拡大への対応でも活用され、今年4~5月には工場勤務を除く約9割の社員の在宅勤務がスムーズに行われた。

 矢野功総務・法務部長は「BCP策定は企業の個別の事情に合わせなければならず、労力もかかる。しかし、人命を最優先しながら事業を継続させるためには重要な仕組みだ」と話している。

大阪北部地震

 平成30年6月18日7時58分、大阪府北部を震源として発生し、大阪市北区と高槻市、枚方市、茨木市、箕面市で震度6弱を観測した。地震による死者は6人。うち2人がブロック塀の崩落に巻き込まれて亡くなった。また、大阪府を中心に、6万棟を超える住宅被害をもたらした。発生時間が通勤時間帯と重なり、通勤困難者を生むなど都市型災害の対応課題を浮き彫りにした。

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