特殊詐欺「受け子」の元巡査公判に注目 全国警察を震撼させた「稲葉事件」の当事者が自戒を込めて指弾
元悪徳刑事も苦言
この衝撃的な内幕は、28年に俳優の綾野剛さんを主役に据え、「日本で一番悪い奴ら」のタイトルで映画化もされた。稲葉氏は、拳銃押収という至上命令のために、道を踏み外していった。
蕪木被告と同列に論じることには無理があるかもしれないが、稲葉氏に見解を求めたところ、「私がいえた義理じゃないけれど」と自戒を込めた前置きをしつつ、取材に応じてくれた。
--なぜ現職の警察官が特殊詐欺グループに関与したのか
「特殊詐欺というのは、検挙率が低い。警察官だからこそ『やっても捕まらない』と、なおさらそう思ったのではないか」
--蕪木被告は何度も犯行を繰り返していた
「悪いことに手を染めれば、後戻りできなくなる。自分もそうだったが、一度やったらタガが外れてしまうものです」
--警察官が犯罪に走るという心理は
「(警察官でも)倫理観がさっぱりなくなると見境がなくなる。手っ取り早く何とかしたいから、狙いやすい高齢者をターゲットにした犯罪に手を染めた。単純なことですよ。ただ…」
--ただ?
「私が道警にいた頃は特殊詐欺という犯罪自体がなかったし、高齢者をだましてお金を取ろうなんて、誰も考えもしませんでした。それを警察官がねえ…」
すねに傷を持つ稲葉氏もあきれる従来の警察官なら「考えもしない」行為。県警の巡査だった男がしたことは、つまりそういうことだといえるだろう。蕪木被告の次回公判は、2月17日に開かれる予定。