PR

ニュース 社会

【台風19号】「てんでんこ」精神、高齢夫婦を救う 福島・いわき

自宅近くを流れる夏井川を見る碇川寛さん=10月29日、福島県いわき市
自宅近くを流れる夏井川を見る碇川寛さん=10月29日、福島県いわき市

 2日で上陸から3週間となる台風19号。多くの住宅で浸水被害が発生した福島県いわき市の高萩地区では、自主的に公民館を避難所として事前に開放し、最大で約80人が身を寄せた。地区内では逃げ遅れによる死者は出なかったが、「避難は不要」という高齢者を無理やり避難させたケースも。背景にあったのは、東日本大震災の教訓だった。

 「万が一のことがあれば後悔すると思った」。同地区で行政区長を務める自営業、碇川寛さん(72)は、こう振り返る。台風が接近していた10月12日午後、同地区内に住む90代の夫婦宅を訪ね、「今のうちに避難しましょう」と呼びかけた。ともに高齢で、夫は体が不自由。東京に住む娘からは「何かあったらお願いします」と頼まれていた。

 当初は避難に前向きだった夫婦だったが「娘と相談したが家にとどまることにした」と電話連絡を受けた。いったんは受け入れた碇川さんだが、東日本大震災の後に岩手県大槌町で町長を務めた弟、豊さんと交わした会話が脳裏をよぎった。

 大槌町は震災による津波で大きな被害が出た。震災の際、豊さんは「津波が来るぞ」と叫んで回り、周囲に避難を促したという。三陸地方に伝わる、津波が来る際はとにかく何も考えずに高台に逃げる「てんでんこ」の精神だ。

 「逃げて、何もなかったら、それでいい」。碇川さんは地元消防に協力をあおぎ、夫を抱えてもらうなどして、同日夕に近くの高萩公民館へ夫婦を半ば強引に避難させた。不安は的中し、付近を流れる夏井川が氾濫。碇川さんの自宅も夫婦宅も150センチ以上の床上浸水に見舞われた。「あのままでは両親は死んでいた」。夫婦の娘からも、こう感謝されたという。

 「いざとなったら自分自身を守らないといけない。自然を甘く見ず、躊躇(ちゅうちょ)しないことが大切だ」。碇川さんは強調した。

あなたへのおすすめ

PR

PR

PR

PR

ランキング

ブランドコンテンツ