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妻迎えに行った81歳男性 「孫の花嫁衣装見るまでは死ねない」かなわず 千葉・長南町

昨年1月に東京都葛飾区の柴又帝釈天を訪れた際の鈴木仁一さん(左)と妻のかず子さん(遺族提供)
昨年1月に東京都葛飾区の柴又帝釈天を訪れた際の鈴木仁一さん(左)と妻のかず子さん(遺族提供)

 台風21号などによる記録的大雨から1日で1週間。被害が大きかった千葉県では、冠水した道路で車が水没するなどして11人が亡くなり、遺族らに深い悲しみが広がっている。

 同県長南町で訪問介護ヘルパーをする鈴木かず子さん(76)は、先月25日午前9時半ごろ、夫の仁一さん(81)に軽トラックで近所の介護先まで送ってもらった。「また迎えに行くね」。訪問介護は午前10時からの1時間。1時間後にはまた会えるはずだった。

 かず子さんは、晴れの日は自転車で出勤するが、雨の日は仁一さんの運転で送ってもらっていた。この日も朝から長南町に激しい雨が降っていた。

 仕事が終わっても迎えは来なかった。家や仁一さんの携帯電話に10回ほどかけたが、つながらなかった。自力で帰ろうともしたが、道路が冠水して進めない。水が引いた後、タクシーを頼んだ。

 道中、路上で軽トラが止まって動かなくなっていた。「うちの車だ」。だが、中に仁一さんの姿はなかった。自宅に戻ったのかもしれないと、かすかな望みをかけたが、自宅に入ると仁一さんの姿はなく、その望みも砕かれた。

 午後8時ごろ、タクシー会社からかず子さんに連絡があった。軽トラが止まっていた近くで消防隊員が集まっているという。駆けつけると、近くの側溝で仁一さんの遺体が見つかったと聞かされ、冷たくなった仁一さんと対面した。

 仁一さんは農業を営み、81歳になった今でも、次男の浩二さん(50)らとコメやハクサイ、ダイコンなどを育てていた。最近はかず子さんと2人で温泉旅行に出掛けるのが楽しみだった。カメラも好きで、同窓会では集合写真の撮影係を買って出たという。

 2男1女を育て、孫は4人。23歳と14歳の孫娘がおり、「孫の花嫁衣装を見るまでは死ねない」と家族に話していたという。

 仁一さんの体は、軽トラとロープで結ばれていた。冠水で動かなくなった軽トラから脱出した際、流されないように結んだものとみられる。浩二さんは「生き延びようと頑張ったのかもしれないね」とぽつりと漏らした。(橘川玲奈)

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