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9日で台風上陸1カ月 千葉・鋸南町長に聞く 「県は情報収集見直して」

 人口約7700人。65歳以上が半数近い千葉県鋸南(きょなん)町は台風15号で大きな被害を受けた。県南の過疎が進む小さな町には、大臣や与野党の国会議員が相次いで視察に訪れ、被害は全国に伝えられた。台風15号は9日で上陸から1カ月。「あっという間だった」という白石治和(はるかず)町長(72)が産経新聞の取材に「1カ月」を振り返り、これからの町の課題を挙げた。(斎藤浩)

 ■国は早かった

 「国の人たちは早かった。野党は初動がどうだと言っているけど、ピントがずれている」

 町長の話では、総務省が一番早く、台風直撃から1日半後ぐらいに町に来た。その後は国土交通省、経済産業省なども。国の早い対応にびっくりした。「どこかの役所の人が言っていた。『6日から態勢を取ってます。台風は地震と違うから予想ができます』って。なるほどなぁと。それに比べて県は遅かった」。

 県によると、防災危機管理部と安房地域振興事務所の職員計2人を同町に派遣したのは13日という。

 「国は乗り込んで情報を取りに来た。県は当初、“情報を上げてください”だったと思う。電源が落っこちて、電話が使えないのに。県の初動に不満を言っても始まらないが、考え直してほしい。新たな情報収集システムを作って。それがまず県の仕事だ」

 町長は、敬老の日にちなんだ90歳以上の家を訪れる行事を決行したという。対象は370人、一部は担当課長が対応した。非常食を持って回った。「こんな時に何をやっていると批判もあったみたいだけど、こういう時だからこそ安否確認のためにやった。電話が使えなかったから。地域がどうなっているかを確認することもできた。確認は行政の責任だ」。町長流の“情報の取り方”だ。

 ■自衛隊にも感謝

 「ボランティアがたくさん来てくれて、全国から支援物資もたくさん届けてもらい、人の温かさに感謝の気持ちしかない。自衛隊にも感謝です。屋根にブルーシートをかける経験が自衛隊員になかったと聞いた」

 町の住宅の半壊と一部損壊は計2268棟(7日現在)。全世帯の約6割で屋根が被害を受けた。町長は「小さな破損も含めると8割強になる」。ボランティアや他県の建設業者、自衛隊員らが雨漏りしないよう屋根に応急処置でブルーシートをかけてくれた。

 統合幕僚監部参事官室によると、自衛隊が災害で屋根にブルーシートをかける作業は、最近では昨年の大阪の地震で例があるが、今回のような規模では経験がない。派遣された部隊によっては初めての体験といい、消防などからレクチャーを受けた。足袋を履いての作業だったという。

 「高齢者は屋根に上がることができない。鋸南町は高齢者が多いから、本当にありがたい」(町長)

 全国の支援は義援金からも分かる。町は独自に口座を開設したが、町によると約3700万円が集まった(1日現在)。友好都市の長野県辰野町が代理で受け付けているふるさと納税による寄付も4千万円を超えた(7日現在)。

 ■生活と経済両面で

 「生活と経済の立て直しを同時に行う必要がある」と、町長は今後の課題を挙げた。まず「生活」とは、ブルーシートに覆われた住宅の再建に他ならない。

 老人福祉センターでは男性3人、女性6人が避難している。避難生活がまもなく1カ月となる石井陽子さん(72)は体の悪い姉(77)と2人暮らし。屋根が壊れ、女手だけでは片付けもできず、センターに避難した。石井さんは姉の通院や家の後片付けのためにも町を離れたくない。「仮設を建てるとか、住宅を借り上げてくれるとかそういった話が全然ない。町が何をやっているのかが見えない」

 住宅再建について、町長も「国、県の予算をもとにできる支援のメニューを町民に早急に提示する必要がある」「高齢の皆さんの一番の要望は“壊れた屋根を早くなんとかして”だ。ブルーシートが早くとれるよう努力する」と話す。

 「経済」とは、農林水産業と商工の中小企業を指す。町によると、農林関係で約4億4500万円の被害で特産の花のカーネーションだけで2億4千万円の被害になる。水産業の被害はまだまとまっていないが、「2つの漁協で計2億円以上にはなるだろう」(担当職員)という。

 「農業をやめよう、お店をやめようという人も出てくるだろう」と町長。離農や廃業は、町の衰退につながりかねない。「“やめなくても大丈夫”と、住民に力を振り絞ってもらえる支援を行政は、確実に手堅く進める必要がある」。町長はそう話した。

 【鋸南町の義援金】ゆうちょ銀行 口座番号00190-3-791836 口座名義 鋸南町災害義援金(キョナンマチサイガイギエンキン)

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