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【目黒女児虐待死 父親初公判詳報】逮捕時よりやせた雄大被告 「連れ子が邪魔だからではない」

凄惨な虐待を繰り返した船戸雄大被告(松本健吾撮影)
凄惨な虐待を繰り返した船戸雄大被告(松本健吾撮影)

午前10時開廷 父親が起訴内容認める

 東京都目黒区で昨年3月、船戸結愛(ゆあ)ちゃん=当時(5)=を虐待し死なせたとして、保護責任者遺棄致死や傷害などの罪に問われた父親の雄大被告(34)の裁判員裁判の初公判が1日、東京地裁(守下実裁判長)で開かれた。雄大被告は起訴内容を大筋認めた。

 母親の優里被告(27)は9月17日、保護責任者遺棄致死罪で懲役8年の判決を言い渡された。判決は、雄大被告から頻繁に説教されるなどの心理的ドメスティックバイオレンス(DV)を受けていたと認定。その上で「雄大被告の暴行を認識しながら、結果的に容認した」とした。弁護側は判決を不服として控訴している。

 起訴状などによると、雄大被告は昨年1月下旬ごろから、結愛ちゃんに十分な食事を与えず、暴行するなど虐待。衰弱していたことを認識しながら、虐待の発覚を恐れて医療措置を受けさせず、3月2日に低栄養と免疫力低下で引き起こされた肺炎による敗血症で死亡させたとしている。

午前10時~10時15分 逮捕時よりやせ

 《現場の自宅アパートからは、覚え立てのひらがなで「あしたはもっともっと できるようにするから」「もうおねがい ゆるして ゆるしてください」などと記された結愛ちゃんのノートが見つかっている。事件は親による子供への体罰禁止や児童相談所の体制強化など法改正のきっかけとなった》

 《雄大被告は母親の優里(ゆり)被告(27)とともに昨年6月に逮捕された。優里被告は9月17日、東京地裁の裁判員裁判で懲役8年の判決を言い渡された。判決は雄大被告の心理的ドメスティックバイオレンス(DV)を認定し、優里被告は「雄大被告の暴行を認識しながら、結果的に容認した」と判断した》

 《午前10時前、裁判長の合図で雄大被告が入廷した。黒のスーツに青いネクタイ姿。少し色白で、髪は短く刈り上げられている。逮捕時に比べてやせたのか、スーツのサイズが合っていないように見える。目をしばたたかせながら、肩を上下に揺らせた。呼吸を整えているのだろうか。裁判員らも入廷。裁判長が促し、雄大被告が証言台の前に立った》

 裁判長「はい、それでは開廷します。被告人は証言台の前に立ってください。名前は何と言いますか」

 雄大被告「船戸雄大と申します」

 《思いのほか、か細い声だった。裁判員がその様子を見つめる。裁判長が生年月日や職業を確認し、人定質問が終わった》

 裁判長「まずは検察官が起訴状を読み上げるから、聞いていてください」

 《裁判長が雄大被告を着席させ、検察官の起訴状朗読に移った。女性検事が証言台の前に立ち、深く一礼した》

 《起訴状によると、雄大被告は昨年1月下旬ごろから結愛ちゃんに十分な食事を与えず、シャワーで冷水をかけて顔面を複数回、殴るなどの暴行をした。結愛ちゃんが衰弱していたことを認識しながら、虐待の発覚を恐れて医師の診察を受けさせず、3月2日、低栄養と免疫力低下で引き起こされた肺炎による敗血症で死亡させたなどとしている》

 《再び証言台の前に立った雄大被告。裁判長が黙秘権などについて説明した上で、起訴内容について、違うところはあるか尋ねた》

 雄大被告「1点だけ。私が結愛の体に危険を感じたのは3月1日ごろではなかったかと思います」

 裁判長「なるほど。弁護人に確認するけど、危険を感じたのは3月1日ごろと?」

 弁護人「はい。船戸さんの罪が成立することの争いはありません。ただし、保護責任者遺棄致死について、病院に連れて行かなければと思ったのは3月1日ごろで、検察官の主張する2月下旬ごろではありません」

 《雄大被告は起訴内容を大筋で認めつつ、結愛ちゃんの体に危険が及ぶと認識した時期については検察側と異なるとの主張だ》

 《雄大被告は優里被告に心理的DVをしていたとされる。罪状認否が終わると、検察官がどのように犯罪事実を証明するかを説明する冒頭陳述が始まった。犯行に至る経緯や動機はどこまで解明されるのだろうか。女性検事が冒頭陳述を読み上げる》

 検察官「それではこれから冒頭陳述を行います。配られているA3判の紙に沿って行います。皆さんはメモの『事案の概要等』をご覧ください」

 《女性検事が裁判員に丁寧に説明すると、裁判員が手元の資料に目を落とした》

 検察官「本件は罪の成立には争いはありません。争点は情状、量刑。つまり被告人にいかなる刑罰を科すかということになっています」

 《雄大被告と優里被告は平成28年4月、香川県で結婚。約半年後に優里被告の連れ子だった結愛ちゃんの弟が生まれたころから、結愛ちゃんへの暴行が始まったという。結愛ちゃんは児童相談所の一時保護と解除を繰り返し、最終的に両親のもとに戻ることになる。雄大被告が先行して単独で東京に転居。30年1月の結愛ちゃんの身長、体重を女性検事が紹介した》

 検察官「被害者の身長は105・2センチ、体重は16・66キログラムでした」

 《雄大被告を追うように、優里被告と結愛ちゃんが東京に転居する際、移動中の電車で結愛ちゃんの写真が撮影された。生前の結愛ちゃんを写した写真は、これが最後になった》

 検察官「東京に転居してからの39日間、結愛ちゃんはほぼ外出していません」

 《しかしこの間、結愛ちゃんを除く家族3人で東京・浅草観光などをしていたという。雄大被告は5歳の結愛ちゃんに対しては達成困難な課題を次々と突きつけていく。課題ができない場合は水のシャワーを浴びせる暴行を加えた。2歳児並みの体重になるまでやせ細った結愛ちゃん。雄大被告による虐待の実態が次々と明らかにされていく》

午前10時15分~40分 ハンカチで目頭おさえる

 《検察側の冒頭陳述が続く。女性検事がはっきりした口調で、雄大被告による虐待の実態を明らかにしていく》

 検察官「被害者の顔面を殴打し、腫(は)れ上がりました。被害者は嘔吐(おうと)を繰り返すようになりました。被告人は被害者への虐待の発覚を恐れ、病院に連れて行きませんでした。3月2日、被告人が119番通報し、搬送しましたが、病院で死亡が確認されました」

 《女性検事は一拍おいて、こう続けた》

 検察官「5歳11カ月の生涯でした」

 《法廷が静まりかえる》

 検察官「被害者は身長108センチ、体重12・2キログラムになっていました。170カ所の傷があり、皮膚は浅黒く変色していました」

 《その後、女性検事は自宅から4袋の大麻が発見された経緯などを述べた後、量刑判断にあたって必要な論点を3つ挙げた》

 検察官「争点は量刑です。被告人にいかなる刑を科すべきか。論点は3点。1つは犯行態様の悪質性です。虐待や傷害の程度がポイントになります。また保護の必要性を認識したのが2月27日ごろか、その後か」

 《女性検事は2つ目として、動機に酌(く)むべき点があるかどうかの『責任、非難の程度』、3つ目に5歳の生命が奪われた『被害結果の重大性』を挙げた。その後、今後の審理予定を説明。こう続けた》

 検察官「罪にあった適切な刑罰を決めていただきたいと思います」

 《続いて弁護側の冒頭陳述に移る。男性弁護人が証言台の前に立つ》

 弁護人「人の親になるということは難しいことです」

 《弁護人は抑揚のつけた話し方で、突然、こう切り出した》

 弁護人「家族の数だけ親の形はあります。時間をかけて親の形を模索しています」

 《子育ての過程で喜びを感じることもあれば、苦しみや葛藤(かっとう)、挫折を感じることもある。弁護人はそう訴えた》

 弁護人「虐待は決して許してはいけないことです。それでも彼(雄大被告)は、結愛ちゃんの父親になろうとしていました」

 《弁護人が雄大被告の生い立ちを紹介する。幼少期に千葉から北海道に転居するなどした経験から、他人を気にしたり、自分を押さえつけたりすることを学んだとされる。大学卒業後にシステム保守(メンテナンス)の仕事に就職。退職後は知人の紹介で北海道のクラブに勤務。その後、香川県内のキャバクラに移り、平成27年5月ごろ、優里被告と出会ったという。優里さんは離婚歴があり、子供がいることを雄大被告に伝えていたが、2人は急速に距離を縮め、一緒に生活するようになったという》

 弁護人「船戸さん(雄大被告)は結婚を強く意識するようになりました。彼には理想の家族(像)があって、明るくて何でも言い合える関係です。この正しい、しかし、高い理想は、船戸さんにプレッシャーになりました」

 《雄大被告は持っていたハンカチタオルで口元をおさえると、そのまま目頭をぬぐった》

 弁護人「ここから船戸さんは間違った方向に行きます。優里さんに対してきつくあたるようになり、罵声(ばせい)を浴びせることもありました。優里さんは船戸さんに対して、ものを言えないようになりました。平成28年4月、入籍して、結愛さんとも養子縁組しました」

 《雄大被告は、結愛ちゃんの友達が少ないのではないかと考えたという。その焦り、いらだちが結愛ちゃんに向くようになったという》

 弁護人「悪いサイクルが回転するように、諭す声が大きくなり、『お化けが出る』などと脅すようにもなりました。それでも言うことをきかないと、押し入れに入れたりしました」

 《結愛ちゃんは香川県内の児童相談所に一時保護されるが、雄大被告は「100%は納得していなかった」という》

 弁護人「船戸さんは児相の職員から『血がつながっていない親子だから』といわれ、行政への拒絶反応がありました」

 《雄大被告がハンカチタオルで目頭をおさえる。雄大被告が先行して東京に転居。その後、後を追うように転居してきた優里被告と結愛ちゃん。このとき雄大被告は結愛ちゃんが「食事を過度にとっていた」ことに怒りを覚えたという》

 弁護人「理想の子供をつくることにギャップが生じていました。結愛さんに対する態度がきつくなり、食事制限を与えるようになりました」

 《裁判員はその動機をどうとらえただろうか。雄大被告は虐待行為をエスカレートさせていく》

 弁護人「(雄大被告は結愛ちゃんに)理想の子供であってほしい。友達をたくさんつくってほしい。目標を見つけて達成する、達成感を味わってほしい…と思っていたのです」

 《弁護人が結愛ちゃんが亡くなるまでの経緯を説明する。雄大被告は肩を落としながら、ただ、弁護人の言葉に耳を傾けていた》

午前10時40分~11時30分 「連れ子が邪魔だからではない」

 《弁護側の冒頭陳述が続く。雄大被告はハンカチで口と鼻を押さえ、嗚咽(おえつ)をこらえるようなしぐさを見せる》

 弁護人「なぜ、船戸さんがその行為をしたのか、その理由に思いをはせてほしいと思います。怒りとか悲しみ、エゴに基づく行為で、正当化できるものではありません。それでも、親でありたいという気持ちが見て取れます。決して、愉快犯的な犯行でも、連れ子が邪魔だからやったことでもありません」

 弁護人「もう1つの視点があります。今回、起訴されているのは保護責任者遺棄致死罪です。殺人や傷害致死ではありません。適切な保護をしなかったことの責任が問われます。過去の経緯も無視することはできませんが、彼がしてきた虐待や、妻である優里(ゆり)さんへのDV(家庭内暴力)を裁く場ではありません」

 弁護人「不保護の経緯がどのようなものだったか。どのような刑を言い渡すのが相当なのか。船戸さんのしたことの責任は重い。ただ、重いとかひどいということでは判断できません。証拠調べが終わった後、彼にふさわしいと思う量刑を述べたいと思いますので、この法廷を見ていただきたいと思います」

 《適切な保護をしなかったことで結愛ちゃんを死亡させてしまった「保護責任者遺棄致死罪での起訴」という点を強調する弁護側》

 《休廷を挟み、検察官の証拠調べが始まる。雄大被告は落ち着いた様子だ》

 《検察官が捜査報告書を説明していく。事件現場となったアパートの所在地や写真、部屋の見取り図などが次々に示されていく。流れは優里被告の公判の時と同じだ》

 《モニターに示される事件直後の自宅の様子をじっと見つめる雄大被告。事件前の生活がフラッシュバックするのか、事件後の急変した生活を思うのか、時折ぎゅっと長く目をつぶって涙をこらえ、ごくりとつばを飲み込む様子も見られた》

 《検察官が部屋の中の詳細を説明していく。結愛ちゃんが生活していた6畳間で、結愛ちゃんの生活を定めた「ルール」が書かれた貼り紙などが紹介される》

 検察官「テレビ台の周りには、段ボール紙が置かれ、貼り紙もされていました。テレビ下の横長の段ボールにはかけ算の九九が1の段から9の段まで書かれています」

 《左脇の段ボールには「たいじゅうをはかる」「はみがきをする」「4じになったらおふろそうじをする」など、テレビに貼られた紙には「かけざん まちがえずにつまらずにいえるようにれんしゅうする」などと書かれていた》

 《検察官は布団の状況の説明に移る》

 検察官「中央に布団があり、枕元にあめやペットボトルがあります。経口補水液は約200ミリリットルが消費されています。ブドウ糖入りあめは2個消費されています。はちみつ100パーセント入りキャンディーは未開封でした」

 《続いて、ハンガーラックの付近が映し出された》

 検察官「段ボールの中にランドセルが在中しています。手提げには入学のしおりが在中しています」

 《起訴状などによると、雄大被告は昨年1月下旬ごろから結愛ちゃんに十分な食事を与えず、シャワーで冷水をかけて顔面を複数回、殴るなどの暴行をしたとしている。検察官は結愛ちゃんが死亡する直前の2月下旬、目黒区のアパート近くの自動水質計器で計測された1日の水温が平均で8・5度だったと述べた》

 《午前の審理が終わると、雄大被告は硬い表情で、うつむきながら退廷した》

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