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相次ぐ無罪…強制起訴制度に限界 高い立証ハードル

東電旧経営陣に無罪が言い渡されたことに対し、「不当判決」と訴える原告ら=19日、東京都千代田区の東京地裁前(飯田英男撮影)
東電旧経営陣に無罪が言い渡されたことに対し、「不当判決」と訴える原告ら=19日、東京都千代田区の東京地裁前(飯田英男撮影)

 重大事故を引き起こした組織のトップらが強制起訴され、有罪となった例はない。福島第1原発事故で強制起訴された東京電力旧経営陣3被告の裁判でも、かねて指摘されてきた高い立証ハードルを越えられず、強制起訴制度の限界を改めて示したといえる。

 原発事故をめぐる刑事責任が司法の場で問われるのは初めてだった。民事裁判では、事故は予見可能だったとして東電や国に避難者らへの賠償責任を認める判決が出ているが、個人の責任を追及する刑事裁判では、より厳格な立証が不可欠。今回も、そのハードルを越えられなかった。

 強制起訴制度は、検察が独占していた起訴権に民意を反映させる目的で平成21年に導入された。国民から選ばれた検察審査会の審査員11人のうち8人以上が2度「起訴すべきだ」と議決すれば、強制的に起訴される。

 これまで東電旧経営陣を含む9件13人が強制起訴されたが、有罪となったのは2件2人。残りは無罪か罪に問えず裁判を打ち切る免訴と公訴棄却だった。有罪率99%以上の検察による起訴との隔たりは大きい。

 無罪が相次ぐ背景には、起訴基準の差がある。13年の兵庫県明石市の歩道橋事故や乗客106人が死亡した17年のJR福知山線脱線事故では、いずれも法的判断というより、被害者・遺族の処罰感情や原因究明を求める声などを優先する傾向が強かった。

 制度設計に携わった識者からは、証拠が足りず、検察が嫌疑不十分で不起訴とした事件は対象から外し、有罪見込みだが罪状が軽微なことなどから起訴を見送る起訴猶予に限定すべきだとの声も上がる。

 現行刑法では過失責任は個人にしか問えない。事故の被害者や遺族を中心に企業の刑事責任を問う「組織罰(法人罰)」の創設を求める動きもある。業務上過失致死罪に両罰規定を設け、企業が有罪となった場合、罰金などを科す案だ。

 強制起訴によって長期の裁判を強いられる被告の負担は大きい。無罪が確定しても補償規定もない。民意による強制起訴の正当性を担保するためにも、制度の検証と抜本的見直しが必要だ。(大竹直樹)

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