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【強制起訴を考える】重大事故の過失事件、刑事責任追及に限界

 「証拠上、明らかに不起訴の場合でも、検察審査会(検審)の審査という民意を意識して徹底的に捜査するようになったが、その分、捜査現場の負担は大きくなった」

 検察が不起訴にした事件について、有権者で構成する検審が「起訴すべきだ」と2回議決すれば起訴される強制起訴制度。ある検察幹部は捜査コストの増大という負の側面を指摘する。

 例えば、政財官界ににらみをきかせる東京地検特捜部には、政治的思惑などを背景に強制起訴を期待した根拠の乏しい刑事告発が多数寄せられるようになっているといい、幹部は「限られた捜査コストの中で、起訴より不起訴にエネルギーを使うことにもなりかねない」と懸念する。

 検察が独占する起訴権限の執行を監視するという検審の意義は大きい。一方、10年前に強制起訴制度が導入されたことで、さまざまな弊害や矛盾が噴出していることも確かだ。

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 鉄道・航空などの重大事故や医療過誤といった業務上過失事件の捜査は「特殊過失」と呼ばれ、高度な専門的知識が要求される。警察では「捜査1課の精鋭を集め、相当な時間と人員を割いて捜査しなければならない」(警察庁関係者)。

 乗客106人が死亡した平成17年のJR福知山線脱線事故では、JR西日本の歴代社長3人が強制起訴された。「利益優先、安全軽視の組織風土」という事故の背景要因を含む原因究明を求めてきた犠牲者遺族の大森重美さん(70)は「検審が私たちの意をくんでくれた。強制起訴がなかったら公判すら開かれなかった」と振り返る。

 この10年で強制起訴された9件のうち、重大事故の業務上過失事件は脱線事故に加え、兵庫県明石市の歩道橋事故(13年)の元明石署副署長と東京電力福島第1原発事故(23年)の旧経営陣3人=9月19日に判決予定=の3件。いずれも法的判断というよりも、組織トップらに対する遺族・被害者の処罰感情や組織的要因を含む原因究明などを優先した判断の傾向が強かった。だが、膨大な時間と労力が使われた裁判の結果、脱線事故は無罪、歩道橋事故も罪に問えず裁判を打ち切る免訴になった。

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