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【主張】豚コレラ 縦割りの弊害廃し根絶を

 豚コレラの感染拡大防止に向け、農林水産省は野生のイノシシに餌ワクチンを使用する。

 野生動物へのワクチン投与は国内初めてで、3月中旬から散布する。

 ウイルスに感染した野生イノシシが拡大の大きな原因の一つになっていると判断したためだ。餌ワクチンの投与で、イノシシから飼育豚への感染ルートを遮断する効果が期待される。

 豚コレラは昨年9月、岐阜県で26年ぶりに国内での発生が確認され、5府県に拡大した。餌ワクチンの散布範囲は岐阜、愛知両県にまたがる一部地域だ。トウモロコシの粉などで包んだこれを食べると10日ほどで効果が出る。

 ただし、餌ワクチンの投与だけでの根絶は難しい。

 海外からの流入を防ぐためには入国管理や税関での水際対策が重要となる。国内では防護柵設置や感染が疑われる豚の出荷制限など、官民を挙げた多角的な防疫態勢の構築が欠かせない。

 留意すべきは、イノシシの所管が農水省と環境省にまたがることだ。北海道大獣医学部の迫田義博教授は「豚コレラの感染拡大は、縦割り行政の落とし穴にはまった側面がある」と語る。

 防疫の面では農水省がイノシシを管轄するが、種や個体の管理・保護という観点からは環境省が所管する。両省とも必要に応じて情報交換しているというが、駆除と保護のはざまで、対策が後手に回ることはなかったか。

 政府がイノシシへの餌ワクチン投与を決めたのは、飼育豚への使用と違い、国際獣疫事務局(OIE)が認める豚コレラ清浄国を返上しなくて済むからだ。それならもっと早く、投与を決めることができたはずである。

 豚コレラのワクチンを開発した研究者の一人で同大の清水悠紀臣名誉教授は「当初からイノシシが感染源とみられていた。餌ワクチンの投与を早期に検討すべきだった」と指摘する。餌ワクチンの輸入先であるドイツは、イノシシへの餌ワクチンの投与で豚コレラを撲滅している。

 餌ワクチンの投与は手探りの状態で散布を実施することになる。関係部局による情報の共有は今まで以上に大切だ。国や県、獣医師ら専門家の緊密な連携が求められる。養豚農家へ大きな経済的打撃を与えるさらなる感染拡大は、何としても防ぎたい。

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