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【産経抄】9月9日

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 銀行マンは取引先の会社を訪ねると3つの点に注意する。トイレ、廊下、予定表である。社員にやる気のない会社はトイレが汚い。商品や伝票は廊下に山と積まれ、予定表には雑なスケジュールしか書かれていない。

 ▼社員の振る舞いは、業績を映す鏡なのだという(池井戸潤、櫻沢健著『「半沢直樹」で経済がわかる!』)。いかなる取引も疑ってかかるのが銀行業界の基本とされ、これを「健全なる猜疑心(さいぎしん)」と呼ぶらしい。それにしても借り手の信用を測る物差しがトイレとは。

 ▼逆はどうか。この銀行のお手洗いをのぞいてみたいものである。低金利時代を乗り切るためには借り手の涙もいとわない。そんな経営がまかり通っていたことに驚く。シェアハウス投資をめぐるスルガ銀行の不正融資で、第三者委員会は「組織的な不正」と断じた。

 ▼シェアハウスの運営会社と手を結び、顧客に自己資金があると見せかけた改竄(かいざん)書類は数百件にのぼる。無担保のずさんな融資や、営業成績の悪い行員を上司がなじるパワハラもあったという。注意を払うのが融資相手の信頼度ではなく、上司の顔色とは言葉もない。

 ▼「自己資金ゼロ」の怪しい文句で始まった儲(もう)け話ゆえ、借り手の落ち度も問われよう。十分な元手もなしに過剰な融資を受けるリスク、うまい話には裏があるという世間の通り相場に敏感であってほしかった。返済に窮したオーナーも多く、成り行きが気にかかる。

 ▼筋の悪い金融業者も顔色を失う不正の構図である。刑事責任を問われてもやむなしの騒動は、やがて「倍返し」以上のしっぺ返しを受けよう。創業家出身の会長らが辞任したところで、信用を測る物差しの汚れは簡単に消えるまい。洗えば落ちるトイレの汚れとは、わけが違う。

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