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【日曜に書く】〝読み合わせ〟で泣くことしかできなかった「8・12」 論説委員・清湖口敏

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【日曜に書く】
〝読み合わせ〟で泣くことしかできなかった「8・12」 論説委員・清湖口敏

日航ジャンボ機墜落事故から12日で33年となるのを前に、「御巣鷹の尾根」の麓の神流川に灯籠を流す子どもら=11日夕、群馬県上野村 日航ジャンボ機墜落事故から12日で33年となるのを前に、「御巣鷹の尾根」の麓の神流川に灯籠を流す子どもら=11日夕、群馬県上野村

 今から思えば、読み合わせの相方に「涙を拭くからちょっと待って」と言ってしまえば済む話だったかもしれない。だが、同僚らには絶対に涙を気取(けど)られたくなかった。男が泣くことがまだまだ恥ずかしいとされていた時代だったように思う。

 昨年1月の大相撲初場所で初優勝を飾り、インタビューで男泣きした稀勢の里は、後で「見苦しい姿をお見せしました」と恥じた。今でも一定以上の年齢層では「男は泣くものではない」との観念が生きているのだろう。稀勢の里も恐らく、周りの大人からそのように聞かされて育ったのに違いない。

 近頃の風潮にみられるような「男らしさ・女らしさ」の頭からの否定には全く同じる気はないが、こと“泣く資格”に関しては、男は「らしさ」の呪縛から解放されてもいいと思っている。喜びにつけ悲しみにつけ涙を流し泣くことは、弱いことでも悪いことでもないはずだ。

昔の男は

 そもそも「男は泣くな」は江戸期に生まれた比較的新しい通念である。古い時代の男がよく泣いたことは神話や物語に徴しても明らかで、八岐大蛇(やまたのおろち)退治で知られる猛者、スサノオノミコトは亡き母恋しと号泣し、ために山は枯れ海川は干上がった。息子と同齢ほどの平敦盛を討った熊谷直実が、武士の身をうらんでさめざめと泣く場面は『平家物語』の圧巻でもある。

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