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【平成30年史 変容する犯罪(1)】ストーカー事件多発 あらゆる通信手段を規制対象にと訴えるも対応に遅れ 「『助けて』という人を守れる国にして」

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【平成30年史 変容する犯罪(1)】
ストーカー事件多発 あらゆる通信手段を規制対象にと訴えるも対応に遅れ 「『助けて』という人を守れる国にして」

ストーカー事案の相談等件数 ストーカー事案の相談等件数

 同本部の佐藤雅一理事官は「相談者に危害が及んだらわれわれの負け。家族が狙われるケースもあり、スピード感を持って対応する必要がある」と説明。ストーカー事件に対する警察の認識は変わりつつある。

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 警察庁によると、全国のストーカー事案の警察への相談件数は、2万件台を突破した25年以降高水準で推移。内容も多様化、複雑化してきている。28年の統計では、配偶者や交際相手(元を含む)が54・4%と半数を超える一方、「面識なし」「関係不明」も13・3%に上った。特に若年層ではインターネットを介した交友関係が主流になりつつあり、実態把握はより困難になっているという。

 加害者への再犯防止の支援も喫緊の課題だ。28年4~12月に警察が医療機関の受診を加害者に働きかけた293件のうち、実際に治療が始まったのはわずか73件と4分の1に満たない。警察関係者は「ストーカーは人間の心が生む犯罪。事件に発展する寸前で立ち止まるケースも多く、社会全体で関わっていく必要がある」と指摘する。

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 桶川事件以降、警察はストーカー事件で失態を繰り返し、その都度、法改正や組織改編で対応してきた。

 「何かが起きて初めて、法整備が進むという流れは変わっていない。同様の事件を見聞きする度に、当時のことがこみ上げてくる」

 24年11月に神奈川県逗子市で元交際相手の男にストーカー行為を受けた末、殺害された三好梨絵さん=当時(33)=の夫(47)は、そう打ち明ける。

 事件では、女性の結婚を知った男が「刺し殺す」などと脅す内容のメールを1日に100通近く送信。男は警察に脅迫容疑で逮捕され、執行猶予付きの有罪判決が確定したものの、その後もメール送信は止まらなかった。警察はパトロールを強化するなどして対応したが、当時、メールの連続送信は規制法の「つきまとい行為」の対象外。再度の立件は見送られた。

 そんな中、男の「殺意」は膨らんでいった。市役所から女性の住所などの情報が男に漏洩(ろうえい)し、最悪の結果を招いてしまった。

 事件から5年。法律は2度変わった。警察、行政は対応改善の取り組みを続けている。だが、それで十分なのだろうか。

 「人の『命』に関わる情報を扱っているという意識が、まだまだ甘いのではないか」。社会全体がストーカーにどこまで向き合っているのか。根本的な意識改革を、夫は望んでいる。

                   

 IT(情報技術)の進展とともに、社会構造が大きく変化し、これまで考えられなかったような事件が次々と起きている。社会を映し出す鏡といわれる犯罪から「平成」をひもとく。

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