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【川崎老人ホーム転落死】視点 急増する高齢者施設虐待 「犯罪の芽」早期に摘む必要

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【川崎老人ホーム転落死】
視点 急増する高齢者施設虐待 「犯罪の芽」早期に摘む必要

今井隼人容疑者逮捕を受けて「Sアミーユ川崎幸町」の駐車場で記者の質問に応じる岩本隆博・積和サポートシステム株式会社代表取締役=16日午後、川崎市(納冨康撮影) 今井隼人容疑者逮捕を受けて「Sアミーユ川崎幸町」の駐車場で記者の質問に応じる岩本隆博・積和サポートシステム株式会社代表取締役=16日午後、川崎市(納冨康撮影)

 心身ともに寄り添うべき入所男性を投げ落とし、殺人容疑で逮捕された今井隼人容疑者。どんな心の闇を抱えていたのか、動機の解明が急がれる。ただ、事件を「特異な個人による犯罪の側面が強い」(厚生労働省担当者)と切り離すのは簡単だが、介護を取り巻く環境が同様の犯罪の芽を生んではいないだろうか。

 虐待の裾野は広がっている。厚労省によると、平成26年度の施設での高齢者虐待は300件と2年で倍増。骨折など重大な危険があった入所者は10人に上った。この数字も自治体が虐待と判断した件数で、被害を訴えにくい認知症患者らを考慮すれば氷山の一角に過ぎない。

 施設での高齢者虐待増加の背景には、介護現場の厳しい現実がある。26年度の福祉施設介護職員の平均月収は21万9700円で、全産業の32万9600円を大きく下回る。長時間労働を強いられることで離職率も高く、職員が育たない「負のスパイラル」に陥っているのが実態だ。

 だが、防げたはずの虐待もある。厚労省の調査では、虐待要因は「職員のストレス」より「教育・知識・介護技術に関する問題」が上回った。介護に慣れぬ職員が認知症患者らに思わず手を挙げたケースも多いとみられる。

 命を預かる以上、施設は限られた環境でも、研修の徹底や、経験の浅い職員1人に任せず「密室」を避ける工夫など、意識や質の向上が求められる。監督する自治体も犯罪を芽のうちに摘む指導やサポート強化が必要だ。(伊藤弘一郎)

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