産経ニュース

【東日本歴史事件簿】鬼熊、恋の復讐劇(下)突然の警察方針転換、標的失った熊は毒とカミソリで…

ニュース 事件

記事詳細

更新

【東日本歴史事件簿】
鬼熊、恋の復讐劇(下)突然の警察方針転換、標的失った熊は毒とカミソリで…

鬼熊事件の容疑者、岩淵熊次郎が自殺を図り、運ばれていく様子=千葉県久賀村(現・多古町)(時事新報・大正15年10月1日)

 けいの祖父、吉沢啓十郎の家を訪ねると、啓十郎はけいの息子の正吉(6)をすでに千葉県銚子町の「山川興行部」という興行会社に預けており、残る荷物を送るために出かけたところだった。祖母のとみは、熊にやられた左手に包帯をしてけいの位牌の前に座り、「毎日もう捕まるかと思っていた。なんという惨めなことかわからない」と暗い顔をしていた。おけいの実父の多田仲次郎は、熊の死を聞き、現場に駆けつけて娘の敵もとうとう死んだと狂喜して走り回った。

死の真相

 30日正午、熊次郎の自殺現場を目撃した出沼消防組員、多田幾四郎、鈴木一郎、日下部三次麿の3人が多古署へ呼ばれ、取り調べを受けた。3人は、4日ほど前から熊の隠れ場所に食糧を持ち運んでいたという容疑がかけられた。さらに、ある有力者が裏で関与しているとの情報もある。

 また、熊の旧主人で前県議の五木田太郎、兄の清次郎、妻よねの3人が熊に毒薬を与え、匿ったとして30日正午から多古署で取り調べを受け、一時同署に留置することになった。

 一部には熊にさんざん愚弄されて世間から非難された腹いせとも言われているながらも、捜査本部は、さらに2人を参考人として呼び出したほか、さらに多数の召喚を計画する。

 なお、40日余りの間に警察官、報道陣、自転車屋、自動車屋、さらには「日本一の人気者」を一目見ようとする野次馬が押し寄せ、寒村の商店では物が飛ぶように売れ、一説では捜査本部が置かれた二本松では3万円(現在の3000万~6000万円に相当)の金が落ちたとされている。その銀座のような賑わいも熊の自殺とともに元の寒村へと戻った。

このニュースの写真

  • 鬼熊、恋の復讐劇(下)突然の警察方針転換、標的失った熊は毒とカミソリで…
  • 鬼熊、恋の復讐劇(下)突然の警察方針転換、標的失った熊は毒とカミソリで…

「ニュース」のランキング