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【東日本歴史事件簿】鬼熊、恋の復讐劇(下)突然の警察方針転換、標的失った熊は毒とカミソリで…

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【東日本歴史事件簿】
鬼熊、恋の復讐劇(下)突然の警察方針転換、標的失った熊は毒とカミソリで…

鬼熊事件の容疑者、岩淵熊次郎が自殺を図り、運ばれていく様子=千葉県久賀村(現・多古町)(時事新報・大正15年10月1日)

警保局長もようやく安堵

 内務省の松村義一・警保局長(警察庁長官に相当)は「捜査隊を縮小して熊の恋敵を逃がした策が当たったとも言えないことはないだろうが、ま、自殺をはかったのでは自慢の出来る義理じゃない。しかし、熊が捕まらないよりは、自殺でも捕まった方がいい」とホッとした表情で語る。「今朝の情報では熊は多少の痙攣を起こしているが、別に毒を飲んで中毒した症状がない。命はとりとめるらしいとの報告があった。熊が40余日も捕まらなかったことは警察の失態とは思わない。土地の状況と、熊に同情があったらしいこと、恐怖から熊をかばったことが原因らしいし、並びに今後、熊の自白によって調査しないと批評はできないが、警察はできるだけの努力をしたことは認めなければならない。昨日も野村警察部長が来て泣かんばかりに残念がって申し訳ないと訴えていたが、別に警察部長には失態がない。努力をしても運ということがあるから今後責任者を出すことは絶対にないと思う」と悪びれず語った。

複雑な心境の寅松

 千葉県印旛郡公津村に潜伏していた、熊の恋敵の寅松に、熊自殺の報せを伝えると、寅松は裏二階から飛ぶように駆け下り、叔父とともに「本当ですか。何だか夢のようです」と満面の喜び。「全く40日余りも執念深い獰猛な熊次郎につけ狙われていたので、すっかり病人になってしまいました。これではいけないと、昨29日午後2時半、多古線飯笹駅で2人の警官に守られて、成田で下車し、午後4時に当家へやっかいになった訳です。皆様のおかげです」とうれし泣きに泣いた。

 熊が凶行をした日のことについては、「おけいが熊次郎に撲殺される時、そこから1町(約100メートル)ほど離れた電工散宿所に逃げ込んで小さくなっていた。殴られてうめくおけいの声は手に取るように聞こえてきて、生きた心地はありませんでした。そうするとやがて警鐘が鳴り出し、火事だ火事だという騒ぎです。もうそのときはどうなることかと思って…」後は声にならなかった。

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