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【東日本歴史事件簿】鬼熊、恋の復讐劇(下)突然の警察方針転換、標的失った熊は毒とカミソリで…

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【東日本歴史事件簿】
鬼熊、恋の復讐劇(下)突然の警察方針転換、標的失った熊は毒とカミソリで…

鬼熊事件の容疑者、岩淵熊次郎が自殺を図り、運ばれていく様子=千葉県久賀村(現・多古町)(時事新報・大正15年10月1日)

「ここも安全とはいえません」

 熊に付け狙われている菅沢寅松は、40日間も家に引き籠もり、すっかり精神にも異常を呈している。印旛郡公津(こうづ)村(現・成田市)で飲食店を営んでいる伯父、村山藤助が引き取った。

 親戚巡りをしたいと言ったものの、警察に引き留められていた土屋忠治もいよいよ、東京方面に旅立った。東京方面には親戚が5カ所ほどある。

 熊についてはいろいろな風説が伝えられているが、19日に現れて以来、確とした足取り情報はない。40数日の山ごもりですっかり野宿にも慣れ、トウモロコシなどを食べているので飢えるようなことはない。これからサツマイモや栗なども手に入るだろうし、人家に食を求めなくても飢えをしのぎやすくなる。10月末の取り入れが住むまでは持久戦で臨み、時機をみることにした。

 公津村に菅沢寅松を29日夜に訪ねると、顔面蒼白で始終おびえながら、「ああまで執念深く熊次郎に狙われては命が縮まります。こことても安全な場所とは言われません。先日、熊が現れて飯と着物を買っていった印旛郡遠山村(現・成田市)駒ケ頭から山続きで2里ほどしかなく、いつ襲ってくるか分からないので、近所の旦那様に何分ともお願いしている次第です」とおどおどしていた。

突然の幕切れ

 しかし、事態は29日深夜に急転した。30日午前4時ごろ、千葉県久賀村出沼の兄清次郎宅から2町(約200メートル)余り離れた山林にある先祖の墓地で、巡回していた消防組員が、カミソリで咽喉部3カ所を掻っきり、苦悶中の熊を発見。直ちに消防組が招集され、、熊の恩人の五木田太郎吉や兄の清次郎らも集まり、苦しむ熊に水をやるなどした。

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