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【東日本歴史事件簿】鬼熊、恋の復讐劇(下)突然の警察方針転換、標的失った熊は毒とカミソリで…

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【東日本歴史事件簿】
鬼熊、恋の復讐劇(下)突然の警察方針転換、標的失った熊は毒とカミソリで…

鬼熊事件の容疑者、岩淵熊次郎が自殺を図り、運ばれていく様子=千葉県久賀村(現・多古町)(時事新報・大正15年10月1日)

 情婦やその奉公先の主人を殺し、岩淵熊次郎(35)が山中に逃亡してから41日が過ぎた大正15年9月29日。一向に事態が開ける気配をみせないため、警察は方針を大きく転換した。それまでは、熊の恋敵である菅沢寅松(25)や、熊をおとしめた土屋忠治(41)を村内に住まわせ続けることで、山中からおびき出して捕まえる作戦だった。それが功を奏さないとみると、一転、2人を遠くに移転させる。報復という目的をなくした熊がおとなしく逮捕されに出てくるのではないかという見立てである。あわせて警察の動員も一挙に3分の1に減らした。

寅松も忠治もようやく村外へ

 寅松は29日朝、棒縞の袷に白の股引を履いて鳥打帽をかぶり、報道の写真班に顔を撮影されないよう、茶色のレインコート地の青年団の外套を頭からすっぽり被って、2人の刑事に守られながら自宅を出発。林から林へと人目を避けて歩き、午前10時半に成田鉄道多古線(現在は廃線)の飯笹駅に現れ、成田行き列車で成田まで行って千葉へと向かった。土屋忠治も、他県へ逃げた。

 警察は二本松の山狩り捜査隊本部も引き払い、多古署の捜査本部にわずか10数人の警察官を残し、ひとまず捜査を打ち切った。血を求める熊は野放しとし、11月上旬の木枯らしが吹くころに捜査隊を繰り出して逮捕することになった。

 40日余りの間に、7万円という多額の捜査費、延べ人員は警察官4000人、消防組・在郷軍人ら3万人以上という大がかりな活動もその効なく、熊に翻弄されて万策尽きた。

 鈴木刑事課長は29日午後5時に記者会見し、悲痛な面持ちで「どうも世間を騒がした上、熊に散々ひどい目に遭わされた」と前置き。熊次郎の捜査を打ち切るに当たり、「熊逮捕については尽くすだけ尽くし、万策尽きてしまった。無能呼ばわりされてもしかたない。野村警察部長と協議し、内務省警保局に行って打ち合わせた結果だ」。

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