関空孤立めぐり中国で偽ニュース 「領事館が中国人を救出」 SNS引用し世論工作か

台風21号
関西国際空港第2ターミナル国際線到着口でインフォメーションのカウンターに並ぶ外国人ら=11日午後(永田直也撮影)

 【北京=西見由章】台風21号の影響で旅行客ら最大約8千人が関西国際空港に取り残された問題をめぐり、「中国の総領事館が用意したバスが関空に入り、優先的に中国人を救出した」との情報が中国のインターネット上で拡散した。SNSでは「強大な祖国」を称賛したり、台湾人旅行客への優越感を誇示したりする声が相次いだが、この情報の核心部分は事実誤認だった。日本で起きた災害をきっかけに、中国国内や台湾への世論工作が展開された形だ。

 関西空港では4日、台風の影響でタンカーが連絡橋に衝突し、空港内の利用客らが孤立。5日から高速船やバスで旅客らを避難させる措置をとった。中国人旅行客も当時、約千人が取り残されていたとみられる。

 「駐大阪中国総領事館が準備した15台の大型バスが、中国国民を優先的に関西空港から避難させた」。中国の公的シンクタンクも関与するニュースサイト「観察者網」は、SNSへの投稿を引用する形で情報を発信した。「自分を中国人と認識する」ことを条件に台湾人も乗車が認められたなどと主張し、中国の公式メディアのサイトもこうした情報を転載した。

 台湾では、中国側の“周到な対応”と比較して与党批判が噴出。台北駐日経済文化代表処の謝長廷代表(駐日大使に相当)はSNSで、中国側のバスが関空に乗り込んだとの主張を否定するなど釈明に追われた。台湾メディアは中国側の情報を「フェイク(偽)ニュース」と切り捨てた。

 真相はどうだったのか。関西エアポートの広報担当者は、中国総領事館が手配したバスが関空の敷地内に入った事実はないと明言した。「他の国の領事館からも同様のリクエストはあったが、混乱を招くのですべてお断りしました」

 中国側の発表によると、中国人客の「集中搬送」が始まったのは午前11時半で、計6回にわたる避難が完了したのは6日未明。一般客の搬送と大差はない。

 関空と中国側の説明を総合すると、一般客は対岸の南海電鉄泉佐野駅まで運ばれたが、中国人客は混乱を避けるため泉佐野市内のショッピングモールの駐車場で降ろされ、中国側が用意したバスに乗り換えて大阪市内に向かった。こうした中国側の対応が、誇張されて拡散した格好だ。「海外で災害などに遭遇した台湾人の不安心理を揺さぶる中国側の巧妙な宣伝工作」(北京在住の台湾籍の男性)との見方もある。