「オウムの本質見誤った」「若者たちがどうやって染まったか」検証訴え 元教祖取材の藤田庄市氏

オウム死刑執行
広瀬健一元死刑囚が藤田庄市氏に寄せた手記。教団にのめり込んだ経験から、現役の大学生にカルトへの注意を呼びかけた(吉沢良太撮影)

 オウム真理教による一連の事件で死刑が確定した元教祖、麻原彰晃元死刑囚=執行時(63)、本名・松本智津夫=ら元幹部13人全員の刑が執行された。若者たちは、なぜ社会を震撼(しんかん)させる凶行に関わったのか。宗教の取材を続けるフォトジャーナリスト、藤田庄市氏(70)は「彼らがどうやってオウムの信仰に染まっていったのか、宗教的背景をきちんと検証するべきだ」と訴える。

 あおむけになった弟子の額に親指を置き、側頭部に手のひらをあてる。ごく静かな時間が流れた。

 平成3年秋、藤田氏は週刊誌の取材で静岡県富士宮市の富士山総本部道場を訪れた。麻原元死刑囚がやって見せたのは「イニシエーション(秘儀伝授)」の一種とされる「シャクティーパット」。インタビューの応答には特に卓越したものは感じなかったし、あれほどの事件を起こすようにも見えなかった。最終解脱に至った場所を問う質問には、少し言いよどんだ。

 一方、麻原元死刑囚の号令の下、熱狂して立位礼拝やヨガに励む信者らの姿には、教祖の強いカリスマ性をみせつけられた。

 掲載された記事は客観的な記述に徹したつもりだが、藤田氏には「オウムの本質を見誤った」という忸怩(じくじ)たる思いが残る。「私にとっては痛恨事。被害者に取材していれば取り上げていないか、違う書き方になっていた」

 事件後、藤田氏は元幹部らの刑事裁判を傍聴し、広瀬健一元死刑囚=同(54)=らと面会を重ねた。

 教団の初の殺人とされる元年の元信者殺害事件。人を殺したことがないはずの新実智光元死刑囚=同(54)=らは1時間ほどで犯行を遂げる。その新実元死刑囚は法廷で一連の事件は「菩薩の所業である」と表現した。そこには数々の判決が言う「口封じ」「強制捜査阻止」という理由では説明できない背景がある、と藤田氏は見る。

 「グル(尊師=麻原元死刑囚)への絶対的帰依」という信仰と厳しい修行、薬物すら用いられた「神秘体験」。これらによって、「これ以上悪行を積んで地獄に落ちないようにするために殺す、という救済・慈悲殺人」という信仰が作り上げられていったという。

 藤田氏は「裁判は事件の外形しか見ていない」とも話す。早川紀代秀元死刑囚=同(68)=が死刑確定直後の面会で話した言葉が今も脳裏に残る。

 「事件は全て麻原の宗教的動機から起きている、と法廷で繰り返してきたが、裁判では認められなかった。また(カルト集団による犯罪が)起こりますよ」

 藤田氏は言う。「無期懲役囚や元信者から話を聞き、裁判資料を精査するなどして、宗教的テロ集団がなぜ生まれたのか、調査すべきだ」