【オウム死刑執行】林郁夫受刑者、岡崎死刑囚…17人と向き合った法廷 元裁判長「集団の論理に支配」 - 産経ニュース

【オウム死刑執行】林郁夫受刑者、岡崎死刑囚…17人と向き合った法廷 元裁判長「集団の論理に支配」

地下鉄サリン事件で、日比谷線「築地駅」前の路上で手当てを受ける被害者=1995年3月
「ひかりの輪」の拠点が入る東京都世田谷区南烏山の施設には大勢の報道陣が集まった=26日午前、東京都世田谷区(佐藤徳昭撮影)
 オウム真理教による一連の事件で、東京地裁の裁判長として17人の被告の刑事裁判を担当した三上英昭氏(73)は、信者たちの後悔を目の当たりにしてきた。「真面目な若者たちが、集団の論理に支配されてしまった」と、組織に流される危うさを語った。
 「私の行為の、何とおぞましいことか」。平成8年3月。地下鉄サリン事件で散布役を務めた元医師、林郁夫受刑者(71)が泣き崩れると、傍聴席の遺族も泣いていた。林受刑者は教団の「治療省」大臣を務めたが、逮捕後に全面自供。「加害者も遺族も、どちらにとっても無残な事件だった」。三上氏は振り返る。
 慶応大医学部を卒業後、米国の病院に勤務し、帰国後には国立病院の医長を務めた林受刑者。「世の中の役に少しでも立ちたいという思いが強く、真摯(しんし)で真面目な人間」と映った。
 一方、同じく審理を担当した岡崎一明死刑囚は、家庭環境に恵まれず、転職を繰り返した末に入信。「取調官など、人に迎合する傾向」も垣間見えた。検察側は林受刑者に無期懲役、岡崎死刑囚に死刑を求刑。後任の裁判長はいずれも求刑通りの判決を言い渡した。
 「単に有罪か無罪かを決めるのではなく、裁判を通じて立ち直る手助けをしたい」と、法廷では被告の人となりを見つめてきた。黙秘する信者に「何か話したくなったら連絡してください」と語りかけると、じっと見つめ返された。
 裁判官になりたての頃、先輩裁判官に言われた。「人間というのは怖いものだよ。大きな組織に入ると、そこの論理に支配される」。教団に従ったかつての若者たちの姿が、いまその言葉に重なる。「人間は弱い。組織に命令されたら簡単には断れない」
 長い裁判を経て、13人の死刑が執行され、オウム事件は一つの区切りを迎えた。三上氏は言う。「死刑は全人格を否定する、それだけ重い刑罰なんです」