【オウム死刑執行】解明なき終幕 「一つの区切り」「心残りも」 捜査・司法関係者の思いは - 産経ニュース

【オウム死刑執行】解明なき終幕 「一つの区切り」「心残りも」 捜査・司法関係者の思いは

東京拘置所前に集まった報道陣と警戒する警察官=26日午後、東京都葛飾区(松本健吾撮影)
確定した主な事件
オウム真理教事件の死刑囚と収容先の拘置所
オウム真理教死刑囚と無期懲役囚の事件への関与状況
 死刑が確定したオウム真理教元幹部ら6人の刑が26日、執行された。麻原彰晃(しょうこう)元死刑囚=執行時(63)、本名・松本智津夫(ちづお)=ら7人の執行から20日。13人の死刑執行により、一連の事件の教団関係者全員の法手続きはすべて終結したが、刑事司法はオウムの真相に迫れたのか。
■目を背けた教祖
 元検察幹部(66)はほぼ不眠不休で現場指揮に当たった当時を振り返る。執務室に連日泊まり込み、「ひげをそる時間も惜しい」と麻原元死刑囚の起訴までひげを伸ばし続けた。
 黙秘を続ける信者から供述を引き出すため、捜査員には教義を頭に入れるよう指示した。一流大学を卒業したエリートたちがなぜオウムの教義にひかれたのか。元検察幹部は「若者たちが宗教に救いを求めるのは否定されるものではない。だが、純粋な信仰心を悪用することは到底許されるものではない」と語る。
 7年10カ月の1審公判で麻原元死刑囚は裁判から目を背け、事件と向き合った信者たちと対照的だった。
 「昔の弟子と直接対峙(たいじ)すれば、供述が変わるかもしれない」。東京地裁の裁判長だった三上英昭氏(73)が林郁夫受刑者(71)=無期懲役確定=の裁判で麻原元死刑囚の証人尋問を決めたのは、そんな思いからだったが、元死刑囚は下を向いて、英単語のような言葉をつぶやくばかり。林受刑者の「直接話してください」という呼びかけにも反応しなかった。
 「あなたの弟子だった人が証言してほしいと言っているのに、誠実に対応する気はないんですか」
 三上氏も迫ったが、証言は得られないまま尋問は終了。「事件で何があったのか、大体のことは裁判で究明できたと思う」と、元教祖が口をつぐんだことによる事実認定への影響は限定的だと見ているが、心残りもある。「自分を信じて帰依した信者に対してきちんと話してほしかった。非常に卑怯(ひきょう)な男だし、同時に、それを信じた被告人たちは気の毒だなと思った」
■「ひとつの区切り」
 オウムとは何だったのか。先の元検察幹部は「一連のオウム事件を総括するのは非常に難しい。すべて明らかにできたかといえば、必ずしもそうだとは言えない。しかし、捜査に携わった警察や検察は、できるだけのことはやったと考えている」と話す。
 一方で、オウムは警察庁長官銃撃事件の関与も疑われた。警視庁公安部は時効成立時に「オウムのテロ」とする捜査結果を公表。オウムの後継団体「アレフ」が名誉を傷つけられたとして提訴、東京都への賠償命令が確定し真相は闇のままだ。
 公安部の元捜査員は「執行は一つの区切り」としながらも、「最後の最後に事件について語ってくれないかと願っていたが、執行によって完全に真相解明の道は絶たれた」と語った。