父の死の真相、今も分からず「教団に怖さと憤り」 目黒公証役場元事務長の長男・仮谷実さん

オウム死刑執行
目黒公証役場事務長監禁致死事件の遺族の仮谷実さん。犠牲となった父の生前の言葉を胸に、「精いっぱい生きる」と語る=東京都江東区

 オウム真理教の元幹部、岡崎(現姓・宮前)一明死刑囚ら6人の死刑が26日、執行され、死刑囚13人の刑が全て執行された。事件の遺族らの怒りは四半世紀を経ても消えない。

 オウム真理教が起こした「目黒公証役場事務長監禁致死事件」の遺族の元には、犠牲になった仮谷清志さん=当時(68)=の遺骨すら戻ってこなかった。父の死の真相を知れずに苦しんだ長男の実さん(58)は死刑囚らの執行を淡々と受け止める一方、改めて「教団の怖さと憤りを覚える」と強調する。

 平成7年、目黒公証役場事務長だった清志さんが路上で車に押し込まれて拉致され、麻酔薬を投与され続けて教団の施設内で死亡した。遺体は施設内の焼却炉で焼かれ、遺灰も捨てられた。裁判は「殺人罪」ではなく「逮捕監禁致死罪」で審理され、死因は今も分からない。

 しばらくは現実を受け入れられなかったという実さん。骨壺には「せめて父に触れている可能性のあるものを」と、遺灰が捨てられたとされる場所にあった小石や、自宅に残っていたメガネを入れている。

 真相を知ろうと井上嘉浩(よしひろ)元死刑囚=執行時(48)=らと面会を重ね、平田信(まこと)受刑者(53)らの公判も傍聴した。しかし納得のいく答えは得られていない。「『殺人』だと私は思っているけれど、証拠がないのも事実。証拠を残さずに犯罪をしてのけた教団に怖さと憤りを覚える」と述べ、後継団体についても「何を起こすかわからず、今も身の危険を感じる」と観察処分の継続を訴える。

 執行については「当然のこと。法に沿って適正に手続きをしていただき感謝する」。6日の執行の報も、「その日が来たんだな」と冷静に受け止めた。

 「俺には家族を守る義務がある」。事件直前、清志さんが語ったこの言葉を、実さんは忘れられない。「父は命を懸けて私たちを守ってくれた。その思いを無にしてはいけない」。実さんは「精いっぱい生きる」と決めている。手帳に挟んで携帯している小さな写真の父とともに。