【文科省汚職】「司法取引を踏まえたやり方」アメとムチの捜査手法、諸刃の剣か - 産経ニュース

【文科省汚職】「司法取引を踏まえたやり方」アメとムチの捜査手法、諸刃の剣か

 文部科学省の私立大支援事業をめぐる汚職事件は24日、東京地検特捜部が文科省前局長ら4人を起訴し、捜査を終結させた。特捜部は容疑を否認する収賄側の2人を逮捕する一方、容疑を認め捜査に協力した贈賄側の2人は在宅のまま取り調べ、認否に応じて差をつけた。「アメとムチ」を鮮明にした今回の捜査手法について、検察OBは「日本版司法取引を踏まえたやり方だ」と指摘。ただ、この手法は自供を引き出しやすい利点がある半面、虚偽供述を誘発しかねない懸念もある。
 「通常は贈賄を認めていても身柄を取るケースだ」。元検事の郷原信郎弁護士は今回の特捜部の対応を疑問視する。過去の汚職事件では収賄側だけでなく、贈賄側も一緒に逮捕されるケースが多かったためだ。
 刑事訴訟法は証拠隠滅や逃亡の恐れがある場合、逮捕できると定めているが、郷原氏は「今回の事件は贈賄側の組織的な背景もあるため、逮捕に至らなかったのが意外だ」と指摘する。
 昨年末に発覚したリニア中央新幹線建設工事をめぐるゼネコン大手4社による談合事件でも、特捜部は談合を認めた2社の幹部を在宅のまま取り調べて不起訴(起訴猶予)としたのに対し、談合を否定し続けた2社の幹部は逮捕して身柄を勾留した上で起訴した。
 元検事の高井康行弁護士は「特捜部は罪を認めれば逮捕されないとの認識が広まることを期待しているのでは」とみる。その背景として、贈収賄や談合といった「密室犯罪」の立証ハードルの高さに加え、捜査環境の変化が挙げられる。
 「昔は特捜部が事情聴取するといえば、任意でも正直に話してくれた」(元検察幹部)。しかし、大阪地検特捜部による強引な取り調べが指摘された郵便不正事件(平成21年)と、この事件の主任検事による押収資料改竄(かいざん)事件(22年)を契機に、供述調書に頼る特捜部の「捜査モデル」が崩壊。一連の刑事司法改革で取り調べの録音・録画(可視化)が導入されるなどしたため、自白を引き出しにくくなっているという。
 こうした捜査環境に対応する「新たな武器」として、今年6月から司法取引が導入された経緯がある。
 ただ、捜査に協力した見返りに刑事処分に手心を加えるという捜査手法は、これまでも検察官の裁量で行われてきたとされ、他人の犯罪を明かした見返りに刑事処分を軽くする司法取引とは直接関係はない。
 郷原氏は「こうした手法を日本版司法取引と関連づけて正当化しようとするのは誤りだ」と批判。高井氏は「『逮捕しないから認めろ』と言えば、検察官に迎合して虚偽自白が生まれる危険もある」と指摘する。捜査への協力を得たい捜査当局と、恩恵を受けたい容疑者の利害が一致したときに虚偽供述が生まれやすいため、「詳細な供述を得た上で、今まで以上の慎重な裏付け捜査が不可欠だ」と話した。