「不自然な感じ」「利用されるのを嫌がった」 遺体引き取り、麻原元死刑囚はなぜ四女を指定したのか

オウム死刑執行
死刑が執行されたオウム真理教の麻原彰晃元死刑囚

 死刑が執行され、火葬されたオウム真理教の元教祖、麻原彰晃(しょうこう)元死刑囚=執行時(63)、本名・松本智津夫(ちづお))=が執行直前、自身の遺体の引き取り先に四女(29)を指定したことは、教団に詳しい関係者にも衝撃を与えた。四女はオウム真理教の後継団体「アレフ」との関係を絶っていたからだ。なぜ四女が指名されたのか。

 関係者によると、麻原元死刑囚は東京拘置所内で無言で過ごすことが多かった。沈黙を貫いてきた理由について、宗教学者の島田裕巳氏は「自分の立場を守るためと、自分を崇拝する信者の信仰を断絶させないためだった」とみている。

 だからこそ、麻原元死刑囚の“遺言”は、島田氏にとっても意外な内容だった。「教団と関係のない四女を指定したのは不自然な感じがする」

 一方、オウム事件の捜査に携わった元警視庁公安部の江藤史朗氏は「宗教として失敗したということは自分が一番よく分かっているはず。元教祖の麻原彰晃ではなく、松本智津夫として最後を迎えたかったのではないか」と推察する。

 公安関係者によると、アレフでは、成人した次男を正式に教祖に迎えようとする動きがあったが、三女が反対。三女に同調した幹部が除名されるなど教団運営に混乱が生じたという。

 麻原元死刑囚は妻との間に2男4女をもうけたが、江藤氏は「自分の遺骨を利用されることを嫌がった。だからこそ、宗教と最も遠い存在の四女を指名したのだろう」とみる。

 遺骨受け入れを表明している四女側は、遺骨の神格化を懸念し太平洋に散骨する方針だ。日本海洋散骨協会によると、散骨は近年増加傾向にあり、昨年は全国で約1万件(推計)。遺骨を粉状にした上で、通常は陸から1カイリ(約1・8キロ)以上離れた領海内で散骨するが、領海内での散骨には漁業関係者や沿岸住民からの反発も予想される。

 同協会の村田ますみ代表副理事は麻原元死刑囚の遺灰の散骨について「葬送の形として散骨を選んでいる人たちの気持ちを逆なでするのではないか」と危惧。島田氏は「海全体が聖地化される可能性もある」と懸念する。