【オウム死刑執行】「一つの区切り」坂本弁護士一家殺害事件捜査に関与の神奈川県警OB、複雑な思い  - 産経ニュース

【オウム死刑執行】「一つの区切り」坂本弁護士一家殺害事件捜査に関与の神奈川県警OB、複雑な思い 

麻原彰晃死刑囚
 オウム真理教による一連の事件で死刑判決が確定していた麻原彰晃死刑囚(63)=本名・松本智津夫=ら元教団幹部7人に6日、刑が執行された。神奈川県内では、平成元年に横浜市磯子区で坂本堤弁護士=当時(33)=一家3人が殺害されるという、オウムの凶行を象徴する事件が起きた。「後にも先にも、あれほど異例の捜査はない」。約30年の年月を経て迎えた一つの区切りに、元捜査関係者らが自戒を込めて当時を振り返った。
 ■総力挙げた捜索
 「『罪を憎んで人を憎まず』と言うけれど、この事件はどうしても人を憎んでしまう」。元同県警捜査1課の検視官で、一家の遺体の捜索に関わった佐藤孝博さん(70)は、そう語る。
 事件は平成元年11月に発生。「オウム真理教被害者の会」を組織し、オウムの活動を批判していた坂本弁護士と妻の都子さん=同(29)、長男の龍彦ちゃん=同(1)=が首を絞められるなどの暴行を受け、殺害された。
 室内にオウム真理教の紋章などが刻まれたバッジ「プルシャ」が落ちていたことから、当初から教団の関与が浮上。だが、逮捕までには約7年の年月がかかった。
 岡崎(現・宮前)一明死刑囚(57)らが一家をそれぞれ新潟、富山、長野の山中に埋めたなどと関与を自供。佐藤さんが遺体の捜索班への参加を知らされたのは捜索前日のことだった。当面の着替えなどを用意して、富山県へ捜索に向かった。
 初日、捜査員らがスコップで掘り返そうとしたが、土が硬くて入らず、重機で少しずつ掘り進めた。およそ3日後、白骨化した遺体の一部を発見した。都子さんのものだった。周囲を掘り進めると、徐々に遺体がそろっていったという。
 「早く遺族の元に」。急いで遺体を神奈川県内の病院に運び、司法解剖にも立ち会った。当時、捜査1課の検視官は全員が県外で捜索に当たっていたため、県警本部は空の状態。有事に備えて、検視経験がある警察官を集めて待機させていた。佐藤さんは「そんな事態は後にも先にも経験がない」と振り返る。
 ■終わりではない
 オウム真理教の後継団体の動向確認は、現在も続けられている。捜査関係者によると、同県内には、死刑執行を受けて公安調査庁が立ち入り検査に入ったオウムの後継団体「アレフ」の横浜市神奈川区の施設など、関係する施設が複数あり、県警にはこれらの実態把握などを目的とした専従班が設けられているという。
 かつて東京都内の教団関連施設の捜索に参加した経験がある元県警警備部員の男性は「施設内には延々と麻原(死刑囚)の説法テープが流されており、1週間くらい頭から離れなかった」と記憶をたどる。信者らが捜索の様子を撮影していたため、マスクとサングラスを着用して捜索活動に従事したという。
 一方、憲法では信教の自由が保障されていることから、宗教団体への警察の介入に関しては警察内部にも慎重な意見もある。この男性は「信教の自由との絡みもあり、警察としては難しさもある」と指摘。だが、こうも話す。「オウム真理教によって多くの人の命が失われ、多くの人の人生が変わった。再発を防ぐためにも、できることは続けていかなければならない」。
 一連の事件の捜査に携わった元県警公安1課員の男性は「(刑の執行を)『まだか、まだか』という思いだった。被害者の方々にとっては、お気の毒な時間だったと思う」と話した。