「トクサイ」隠語で継承 70年代から改竄、顧客欺く

神戸製鋼データ改竄

 日本メーカーの信頼を揺るがす神戸製鋼所の性能データ改竄(かいざん)問題は、東京地検と警視庁が5日に家宅捜索に着手し、刑事事件に発展した。遅くとも1970年代から始まった改竄は特別採用を意味する「トクサイ」の隠語で脈々と引き継がれ、堂々と「トクサイリスト」まで作成する工場もあった。素材メーカーの名門をむしばんできた「顧客軽視」の因習の実態解明が本格化する。

 トクサイは本来は基準を満たさない製品を顧客の同意を得て出荷することを意味しており、こうした出荷自体は素材業界では取引上の「慣行」として扱われている。しかし、神戸製鋼は顧客の同意なく検査データを改竄して製品を「合格品」として出荷することもトクサイと呼んでいた。

 神戸製鋼の調査によると真岡製造所(栃木県真岡市)で半年に1度行われる予算ヒアリングの場では、トクサイを行った製品の割合を示す「トクサイ率」が同所幹部に報告された。

 グループ会社のコベルコマテリアル銅管秦野工場(神奈川県秦野市)では、改竄した製品の顧客名や検査結果を「トクサイリスト」と呼ばれる文書に記録していた。試験の検査結果が公的な規格や顧客が求める性能に達していなくても、このリストの過去の記録を参考にして改竄したデータを検査証明書に書き込んで出荷していた。

 神戸製鋼では検査機が測定したデータが自動的に検査結果として入力されず、一度紙に手で書き取ってパソコンで入力する手順となっていた。こうした環境が安易な改竄を許した一因になったとされる。

 大安製造所(三重県いなべ市)では人員不足を背景に顧客から要求された検査を行わなかったにもかかわらず、検査したように装ってデータを捏造(ねつぞう)した。

 同社が不正の一部を把握して公表後、開始した内部調査に対して、長府製造所(山口県下関市)では、製品の寸法に関してデータを改竄していたことを申告せずに隠蔽(いんぺい)。その後、社内通報で判明し、問題の根深さを浮き彫りにした。

 神戸製鋼が今年3月に発表した報告書では、顧客の要望よりも生産・納期優先の風土が形成され、短期的利益を確保する目的で不正が行われたと指摘。不正が長期化する中で「顧客の信頼を裏切る行為であるという意識さえも薄れていった」と断じた。

 顧客軽視の意識は米司法省も巻き込んだ国際問題に発展し、地検と警視庁の強制捜査を招いた。神戸製鋼広報部の担当者は産経新聞の取材に「捜査に対しては真摯(しんし)に対応してまいります」とコメントした。