座間9遺体、発覚端緒は八王子の女性 兄の執念、警視庁の捜査の徹底ぶり

年の瀬記者ノート
現場アパート付近に手向けられた花=16日、神奈川県座間市

 卒業アルバムの中で、少女はウサギを抱いてはにかむような笑顔を浮かべていた。神奈川県座間市で9人の遺体が見つかった事件の、最後の被害者となった八王子市の女性(23)だった。都内唯一の被害者は事件発覚の端緒になった。

 女性は失踪前の9月、ツイッターで「#自殺募集 死にたいけど1人だと怖い」などと自殺願望をほのめかす内容の投稿を繰り返していた。10月21日頃に消息を絶ち、兄が24日に高尾署に届け出た。その後の捜査で、女性が23日午後、JR八王子駅と小田急線相武台前駅で男と一緒に歩いている姿が確認されたが、この時点では男が何者なのかは分かっていなかった。

 兄は26日になって女性のツイッターアカウントにログインし、投稿を始めた。妹と連絡が取れなくなったこと、妹とDM(ダイレクトメッセージ)でやり取りしたユーザーがいたこと、その人物が妹に首つりを提案したこと…。妹との思い出や、現在の状況などを断続的に投稿を続けた結果、書き込みを見た別の女性から「一度会った人物かもしれない」とメッセージが届いた。

 兄からの情報提供を受けて、警視庁の捜査員が白石隆浩容疑者の存在を突き止め、座間市内の現場アパートに踏み込んだ。異臭漂う部屋からは切断された9人分の頭部が発見され、事件は明るみに出た。八王子市の女性以外は神奈川、埼玉、群馬、福島県の10~20代の男女。各県警が捜査をしていたが発見には至っていなかった。

 逮捕時点で白石容疑者は別の女性とも会う約束をしており、さらなる被害者が出た恐れもある。絶対に妹を見つけ出すという兄の執念、情報提供に即座に対応して容疑者を見つけ出した警視庁の捜査の徹底ぶりを感じた。

 取材した女性の元同級生は「本当に自殺のために犯人に会いに行ったのかな」とつぶやいた。「話を聞いてほしいと救いを求めて会いに行ったのかもしれない。犯人がいなかったら死んでなかったかも…。そう考えると、許せない」と涙を浮かべた。元同級生が持つ卒業アルバムの中で、女性は将来の夢を「ペットショップの店員」と書いていた。ウサギを抱いた写真を見て胸が締め付けられた。

 9人もの被害者を出した犯罪史に残る特異な事件の捜査は今も続いている。以前、ある捜査員が「容疑者には犯した罪相応の責任を負わせないといけない」と話してくれた。事件を捜査し、犯した罪に向き合わせることができるのは警察だけ。事件を担当する記者である自分にできるのは…。取材活動を通じて事件の真実と背景に迫り、同類の事件が繰り返されないように警鐘を鳴らす記事を書くことだ。(上田直輝)